気候変動への対応
気候変動への対応についての基本姿勢
2015年12月、国連のCOP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)においてパリ協定が採択され、世界的な平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えるという目標が設定されました。
エア・ウォーターグループは産業ガスプラントにおける酸素・窒素の製造を中心に事業活動で多くのエネルギーを使用しており、これに伴うCO2を多量に排出しています。そのため、気候変動対策が事業活動の継続に関わる大きなリスクの一つであると認識し、グループ全体でCO2排出量の削減に取り組んでいます。
重要評価指数(KPI)の設定
エア・ウォーターは、「気候変動への対応」を経営の最重要課題と定め、中期経営計画「NEXT-2020 Final」においてエア・ウォーターグループの重要評価指標(KPI)として温室効果ガス(CO2)の総排出量削減目標を位置づけています。
この目標を達成するため、エア・ウォーターグループは高効率設備の導入などの設備投資、運転条件改善による徹底した省エネ活動、省エネを担う人材の育成などに積極的に取り組み、CO2の総排出量を削減しています。
また、これら自社の排出するCO2削減への取り組みに加え、エア・ウォーターの活動に関連する他社(供給者・顧客など)の排出量であるCO2の排出量(スコープ3)を新たに算定するなど、サプライチェーン全体の排出量の把握に努めています。
事業を通じたCO2の削減
エア・ウォーターグループは事業による社会課題解決への貢献の一つとして「クリーンエネルギーソリューション」を掲げております。木質バイオマス発電事業やLNG・LPG事業の拡大を通じてお客様が排出する温室効果ガス排出量の削減に貢献しています。
経団連の「低炭素社会実行計画」への取り組み
エア・ウォーターグループは、経団連の低炭素社会実行計画への取り組みに日本化学工業協会を通じて参画しています。グループにおける省エネルギー対策や炭酸ガス排出抑制の計画と実績について日本化学工業協会を通じて経団連へ報告し、日本の低炭素社会実現に向けて取り組んでいます。
CO2排出量削減に向けて
エア・ウォーターグループは、CO2排出量削減目標の達成に向け、プラントの効率的な稼働や高効率な最新設備導入などに取り組んでいます。2019年度は省エネ法の特定事業者に指定された会社において、2013年度比で4.3%削減(70千t-CO2削減)しました。今後もCO2排出量削減の取り組みをさらに強化していきます。
CO2排出量削減目標
集計範囲:省エネ法の特定事業者(エア・ウォーター(株)およびグループ会社31社、計32社)の集計
CO2排出量削減の主な取り組み
エア・ウォーターグループでは、特に省エネルギー法の特定事業者に指定されたエネルギー消費量の多い会社において中長期計画を策定し、設備投資や運用の改善を通じて中長期的にCO2排出量の削減に取り組んでいます。2020年度の中長期計画で代表的な項目は次の通りです。
エア・ウォーターグループのCO2排出量削減中長期計画(2020年度〜)
※横スクロールでご覧いただけます。
事業分野 | 主な取り組み | 削減効果 (t-CO2/年) |
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産業 |
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8,881 |
海水 |
|
2,660 |
農業・食品 |
|
2,444 |
ケミカル |
|
1,620 |
その他 |
|
114 |
合計 | 15,719 |
産業ガスプラントにおけるCO2排出量削減の取り組み
エア・ウォーターの産業ガスプラントでは、空気を原料として酸素、窒素、アルゴンなどを製造していますが、その製造には多量の電力を使用しています。そのため電力会社の火力発電所などを通じ間接的にCO2を排出しており、CO2排出量の削減はエア・ウォーターにとって重要な課題です。
エア・ウォーター(株)の宇都宮工場では2017年に老朽化したプラントを最新のVSUA(小型液化酸素・液化窒素・アルゴン製造装置)に更新をして、製造効率を向上しており、CO2排出量を2017年度は前年度比7.7%、2018年度は前年度比13%削減しました。2019年度は老朽化した貯槽の更新を実施し放出によるロスを削減しています。
再エネ特措法に基づく賦課金に係る特例の認定について
当社及びグループ会社の一部は、再生可能エネルギー特別措置法に基づく賦課金の特例措置認定を受けるに当たり、経済産業大臣に対して省エネ投資計画を提出し、これを実行しています。
温室効果ガス排出量の算定
サプライチェーン全体のCO2排出量
近年、企業が間接的に排出するサプライチェーン全体でのCO2を把握して対外的に開示する動きが強くなっています。このような中、エア・ウォーターグループは自らのエネルギー使用に伴い排出するCO2(スコープ1、2)に加え、サプライチェーンにおけるCO2排出量(スコープ3)の排出量を算定しています。
サプライチェーンにおけるCO2排出量は環境省発行の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づき、カテゴリー別に算定しています。
※横スクロールでご覧いただけます。
事業分野 | 備考 | 排出量 (千t-CO2) |
---|---|---|
スコープ1 | 289 | 自社の燃料等の使用による直接排出 |
スコープ2 | 1,274 | 他社から供給を受けた電気、蒸気などによる間接排出 |
スコープ3 | 2,366 | サプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な排出 |
スコープ3排出量算定値
※横スクロールでご覧いただけます。
カテゴリー | 排出量 (千t-CO2) |
|
---|---|---|
1 | 購入した製品・サービス | 493 |
2 | 資本財 | 191 |
3 | スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 206 |
4 | 輸送、配送(上流) | 32 |
5 | 事業から出る廃棄物 | 15 |
6 | 出張 | 2 |
7 | 雇用者の通勤 | 4 |
8 | リース資産(上流) | - |
9 | 輸送、配送(下流) | - |
10 | 販売した製品の加工 | - |
11 | 販売した製品の使用 | 1,422 |
12 | 販売した製品の廃棄 | - |
13 | リース資産(下流) | - |
14 | フランチャイズ | - |
15 | 投資 | - |
合計 | 2,366 |
※カテゴリー10、12は現時点では算定が困難なため集計に含めていません。
カテゴリー8、9、13、14、15に該当する事業はありません。
温室効果ガス排出量の第三者検証
エア・ウォーターグループは温室効果ガス(CO2)排出量を統合報告書およびウェブサイトで公表していますが、外部の客観的な目で確認された透明性の高いデータを提供するため、2017年度から温室効果ガス排出量の第三者検証を受けています。
今後も温室効果ガスの第三者検証により、外部のステークホルダーの皆様により一層信頼いただけるデータの提供に努めてまいります。
エネルギー管理体制
エア・ウォーターは省エネルギー法の特定事業者として、コンプライアンスセンター長をエネルギー管理統括者としたエネルギー管理体制を構築しています。エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、およびエネルギー管理指定工場のエネルギー管理担当者が集まる「省エネ委員会第1部会」とエネルギー消費量の比較的少ない工場や事業所などが集まる「省エネ委員会第2部会」を開催しています。各部会では、省エネ法対応についての各種検討、省エネに関する情報交換、省エネ法に基づくデータ、報告書などの実務検討を実施しています。
また、エネルギーの使用量が多いグループ会社は省エネルギー法に基づくエネルギー管理統括者などの管理者を選任し、エネルギーの管理を徹底しています。この中で、エア・ウォーターのコンプライアンスセンター環境推進部は、グループ会社のエネルギー管理体制について環境監査などを通して確認し、指導を行っています。
エネルギー管理スタッフ情報連絡会
エア・ウォーターでは、省エネルギー法の特定事業者に指定されたグループ各社を対象として2015年よりエネルギー管理スタッフ情報連絡会を開催しています。外部講師による講演のほか、コンプライアンスセンター環境推進部からの情報提供、省エネ事例の発表を通して教育を行うとともに、グループの省エネに関する情報交流の場を設け人材育成を行っています。
輸送分野での取り組み
エア・ウォーターグループでは、輸送会社と協力しながら荷主として省エネルギーと温室効果ガスの削減を推進しています。
<輸送分野における中長期目標>
エネルギー消費原単位を中長期的にみて(過去5年度間)平均1%以上低減するという目標に対し、5年度間平均で0.9%悪化しました。また前年度より3.7ポイント悪化しました。この主な増加原因は海水事業のトラック輸送が増加したためです。
今後はVSU(小型液化酸素・窒素製造装置)の新設による産業ガスの配送距離削減、海水事業における陸上輸送の満車化、海上輸送の満船化、輸送船の大型化を進めて、エネルギー消費原単位と温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。
輸送分野における温室効果ガス排出量とエネルギー消費原単位指数
気候変動への適応策(医療用・産業用ガスの継続的な供給)
近年、気候変動の影響とみられる大型台風の頻繁な上陸や記録的な豪雨などの大規模な自然災害が頻発しています。気候変動への影響は既に顕在化しており、今後深刻化するとおそれがあるため、エア・ウォーターグループは気候変動による影響を回避・軽減する対策が不可欠であると考えています。
当社グループは、VSU(小型液化酸素・窒素製造装置)の分散配置により、災害による設備停止やガス供給ルートの分断などのリスクを軽減しています。これにより大規模な自然災害があった場合でも医療用・産業用ガスの継続的な供給を続けることが出来るように備えています。今後も全国にVSUを設置し、リスクの低減に取り組んでいきます。
環境への取り組みに関する外部からの評価
CDPによる評価
エア・ウォーターグループは、世界の主要企業の気候変動に関する情報を収集・評価しているCDP※の調査に回答しています。その結果、気候変動に対する取り組みや情報開示に関する評価として、2019年度に気候変動「A-(Aマイナス)」、2020年に「B」の評価を受けました。また水資源の枯渇などウォーターセキュリティに対する評価として2019年に「B-(Bマイナス)」、2020年に「B」の評価を受けました。
※ロンドンに本部を置く国際的な非営利団体。企業の低炭素化への取り組みを促進することを目的として、気候変動に関する経営リスクの観点から、世界主要企業の気候変動に関する情報を収集・分析・評価した結果を機関投資家向けに開示している。
「DBJ環境格付融資」の対象に選定
エア・ウォーターは、2020年3月、(株)日本政策投資銀行(DBJ)より、グループ全体で着実に環境経営を推進している点、不断の改善や継続的な環境保全投資により、事業活動による環境負荷の低減に取り組んでいる点、社会課題の解決に資する事業展開を促進している点などが高く評価され、「環境への配慮に対する取り組みが先進的」との格付を取得、「DBJ環境格付※」に基づく融資の対象に選定されました。
※企業の環境経営度を評点化し、得点に応じて融資条件を設定するDBJによる世界初の融資メニュー