地球温暖化に対する危機感は年々高まり、日本政府が2050年までにカーボンニュートラルを実現する方針を打ち出すなど、社会全体で脱炭素化に向けた動きが加速しています。こうした社会情勢下、企業が持続的成長を図るためには、地球環境問題への対応を「企業の社会的責任」として捉えるだけでなく、「成長の機会」につなげていかなければなりません。エア・ウォーターグループは、カーボンニュートラルに向けて、自社のGHG排出量を減らす「責務」と、製品・事業を通じた社会のGHG排出削減への「貢献」の両面から取り組みを推進しています。
エア・ウォーターグループは産業ガスプラントにおける酸素・窒素の製造を中心に事業活動で多くのエネルギーを使用しており、これに伴うCO2を多量に排出しています。そのため、気候変動対策が事業活動の継続に関わる大きなリスクの一つであると認識し、グループ全体でCO2排出量の削減に取り組んでいます。合わせて、2050年に自社グル一プの事業活動での力一ボンニュ一トラルはもとより、サプライチェ一ン全体で脱炭素化を目指すとともに、技術革新への不断の取り組みや水素、再生可能エネルギーの利活用などを通じて、力一ボンニュ一卜ラル社会の実現に貢献します。
エア・ウォーターグループは「環境ビジョン2050」の制定を契機に、気候変動への対応のマイルストーンとして、2030年度の国内連結子会社のCO2排出量(Scope1・2)の削減目標をKPIに設定しました。新たに定めた目標は、GHGプロトコルを算定ベースに「2030年度に30%削減(2020年度比※)」とし、2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく、グループ全体で脱炭素社会の実現に向けて取り組んでまいります。なお、2022年度は、KPIの基準年度である2020年度比において、削減率4.0%となりました。
2030年度KPI |
2021年度実績 |
2022年度実績 |
30%削減(2020年度比) |
10.7%増加 (2,341千t-co2) |
4.0%削減 (2,031千t-co2) |
※GHGプロトコルに基づく2020年度の国内連結子会社のエネルギー起源CO2排出量(2,115千 t-CO2)
今後、企業成長に連動し、エネルギー消費量の増加が見込まれますが、3つの施策「省エネ」「電力のグリーン化」「燃料転換」を柱に、削減目標の達成と成長の両立を目指します。
自社の生産活動に伴う直接排出(Scope1)については、省エネ設備などへの脱炭素投資を含む省エネルギー活動、燃料転換による生産工程で使用されるエネルギーの低・脱炭素化、バイオマス燃料の活用などにより排出量を削減します。また、外部購入エネルギーによる間接排出(Scope2)については、Scope1同様に省エネ設備などへの脱炭素投資を含む省エネルギー活動や電力のグリーン化(再エネ化)の拡大による削減を目指します。そして、2050年までには、次世代エネルギー (水素、アンモニア、合成燃料など)の活用も含めてカーボンニュートラルを目指します。
今後は、これらの施策を事業ごとに具体的なロードマップで見える化し、その取り組みを加速させていきます。あわせて、その情報開示の充実化を図っていきます。
エア・ウォー夕ーグループのサプライチェーン全体におけるCO2排出量を把握するため、2020年度からGHGプロトコルに基づき、スコープ別に排出量を算定しています。
2022年度の温室効果ガス(GHG)総排出量は6,513千t-CO2、そのうちScope1・2の合計は3,036千t-CO2となりました。
また、目標設定対象排出源である国内エネルギー起源CO2においては、バウンダリの構造的変化および製造プロセスの省エネ、燃料転換、オンサイトPPA(太陽光発電電力購入契約)の導入などにより、2021年度比で84千t-CO2減少となる2,031千t-CO2となり、KPIの基準年度である2020年度比では、削減率4.0%となりました。
なお、2022年度のGHG排出量は日本品質保証機構の第三者検証を受けた値です。詳しいデータについては、下記のページをご覧ください。
エア・ウォーターグループは、自社のGHG排出量を減らす取り組みを「責務」と捉え、エネルギー使用量の低減、使用エネルギーの脱炭素化、生産プロセスの改善、技術開発の推進などに取り組んでいます。
エア・ウォーターの産業ガスプラントでは、空気を原料として酸素、窒素、アルゴンなどを製造していますが、その製造には多量の電力を使用しています。そのため電力会社の火力発電所などを通じ間接的にCO2を排出しており、CO2排出量の削減はエア・ウォーターにとって重要な課題です。
エア・ウォーターでは、老朽化したプラントを最新機に更新することで、電力使用量削減によるCO2排出量削減に取り組んでいます。
当社及びグループ会社の一部は、再生可能エネルギー特別措置法に基づく賦課金の特例措置認定を受けるに当たり、経済産業大臣に対して省エネ投資計画を提出し、これを実行しています。
エア・ウォーターグループは、工場で使用するエネルギーの一部を再生可能エネルギー由来とすることで、GHG排出量の削減を進めています。ハム・ソーセージを製造する大山春雪さぶーる㈱米子工場では、PPA※による太陽光発電設備を設置し、2022年度は約158t-CO2の削減を図りました。今後も継続して自社拠点にPPA・太陽光発電を設置し、環境に配慮した事業活動を進めます。
※PPAとは「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略称で、電気を利用者に売る電力事業者(PPA事業者)と電力の使用者との間で結ぶ「電力販売契約」のことを示します。
エア・ウォーターグループは、多様な事業領域の成長軸と打ち出した「地球環境」を中心に、事業活動を通じた社会の温室効果ガス(GHG)排出削減を「貢献」と捉え、自社の責務との両面で、GHG排出量削減の取り組みを推進しています。
低炭素・脱炭素に貢献する主な製品・サービスは、FIT制度を活用した木質バイオマス発電事業、重油からの燃料転換によりエネルギーの低炭素化を実現する小型LNGサテライト設備「Vサテライト」、従来のガス関連機器と比較して高い製造効率と消費電力の低減を実現した産業機器などがあり、これらを通じて年間約203千t-CO2eのGHG排出量削減に貢献しています。(2022年度)
<主な脱炭素、低炭素に貢献する製品・サービス>
製品・サービス名 |
削減貢献量 (t-CO2e/年) |
備考 |
139,417 |
FIT制度を利用した再生可能エネルギー電力の販売 |
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54,361 |
重油からLNGへの燃転 |
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8,883 |
水素ガス発生装置「VHR」、窒素ガス発生装置「NSP-Pro」 |
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合計 |
202,661 |
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エア・ウォーターグループは、2021年8月に金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明するとともに、「TCFDコンソーシアム」に参画しました。TCFD提言では、気候変動に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に関する情報開示が求められています。エア・ウォーターグループは、提言に沿って情報を開示するための取り組みを進めています。