「歯髄・象牙質再生治療」とは、不用歯と呼ばれる噛み合わせに無関係な歯(親知らずや矯正治療で抜く歯)や抜けてしまう乳歯から歯髄幹細胞を採取し、神経を失った歯に移植して、歯髄だけではなく象牙質と呼ばれる歯の固い組織の再生をおこなう治療です。エア・ウォーターグループのアエラスバイオ(株)では、その治療に用いる歯髄幹細胞に関連した研究開発を行っています。自分の不用歯から採取した歯髄幹細胞を自分の歯に移植してその神経を再生する「自家歯髄再生治療」はすでに実用化されていますが、不用歯を持たない患者さまにも歯髄再生治療を受けていただけるような研究も進めています。
現在、取り組んでいる主な研究テーマは以下の内容で、将来的には歯髄幹細胞を用いた口腔関係の再生医療やその他医科関係の再生医療にも適用範囲を広げる予定です。
- 他家歯髄再生治療
他人の不用歯から採取した歯髄幹細胞を他家(両親、祖父母、兄弟等)に安全な細胞として提供できるようにする研究を行っています。
- 象牙質再生
神経は柔らかい組織なので再生した後の表面に強固な象牙質(歯の固い部分)を再生することが求められます。この象牙質を再生する目的で歯髄を取り出した後の不用歯を加工して安全に使用する研究を行っています。(2023年6月実用化済)
歯髄再生治療は医療行為になりますので、医療機関である医療法人健康みらいRD歯科クリニックと共同で以下の取り組みを実施しています。
自分の細胞である「自家細胞」を用いた歯髄再生治療を含む身体の再生医療は、日本国内の医療機関で1,000件以上が実施されていますが、他人の細胞である「他家細胞」を用いた再生医療は数件のみで、実施するには極めて高い障壁があります。
エア・ウォーターが研究を支援しているRD歯科クリニックでは、この障壁を乗り超え、二親等以内のご家族の細胞を用いる「他家歯髄再生治療」の実用化を目指し、臨床研究を実施しています。これを成功させるため、他家の細胞を培養する過程で、細胞提供者が持っている可能性のある感染源を排除し、安全を証明する品質管理技術を研究しています。また、一つの不用歯から採取した細胞を多くの人に移植することも可能であることから、大量に品質の良い細胞を培養する研究も進めています。
RD歯科クリニックでは、2027年を目安に臨床研究を終え、「他家歯髄再生治療」を開始することを目標にしています。
歯の粉砕物を歯の神経組織の上に置くと歯髄組織の働きでそれらの粉砕物が象牙質として歯の一部になることは古くから知られていました。この原理を活用し、歯髄幹細胞を採取した後の不用歯を適切なサイズに粉砕して、歯髄再生治療時に細胞と一緒に移植することにより、歯髄再生後の歯髄表面に堅固な象牙質膜が出来る治療法及び粉砕物の加工技術の研究を進めました。
アエラスバイオ(株)と連携するRD歯科クリニックは、2023年3月に特定認定再生医療等委員会において治療計画が承認され、同年4月に厚生労働省にて受理されました。これに伴い、本年6月より、同クリニックにおいて「歯髄・象牙質再生治療」を実用化いたしました。