地域に根差した持続可能な脱炭素社会の実現に向けて、地域の未利用バイオマスを用いたエネルギー創出と地域の特色に合わせたエネルギーの地産地消型のサプライチェーンモデル構築に関わる研究開発を行っています。
地域ごとに未利用の資源は異なるため、地域の特色に合わせたエネルギーの創出に関わる技術開発に取り組み、地域循環型社会の形成を目指しています。
- 新型バイオマスガス化技術の開発
木質チップに加え、剪定枝や竹などの多様な木質バイオマスを発電燃料として利用するガス化技術の開発を行っています。
- バイオメタン製造技術の開発
コーヒー粕や茶粕などの食品廃棄物や家畜ふん尿を原料としたバイオメタン製造の研究開発を行っています。
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未利用バイオマスの資源循環モデル開発
上記2つの技術を活かして、未利用バイオマスから得られた電気、熱、CO2を農業と陸上養殖に活用する地域資源循環モデルを開発しました。
現在、長野県松本市において、その実証施設となる「地球の恵みファーム・松本」を建設中です。
- 液化バイオメタン製造システムの開発
国内で初めて、家畜ふん尿由来のバイオガスを原料にして、液化天然ガスの代替となる液化バイオメタン(LBM)を製造するシステムを開発しました。現在、北海道の十勝地区において、原料となるバイオガスの回収・輸送からLBMの製造・供給に至るまでのサプライチェーンモデル構築に向けた実証を行っています。
再生可能エネルギーとしてバイオマス発電の普及が進んでいる中で、長野県安曇野市では木質バイオマスである間伐材を発電燃料としたガス化発電設備を導入。電気と熱、さらにはCO2を有効活用する「トリジェネレーション事業」を2021年より開始しています。
また、松本市に建設中の「地球の恵みファーム・松本」では、木質チップはもとより、地域で処理に困っている竹や剪定枝などを発電燃料として利用可能で、タールが発生しないバイオマスガス化炉を国内で初めて導入します。松本市内で多く発生している木質系一般廃棄物のほか、林地残材や間伐材などの未利用木材を種類問わず受け入れる計画です。現在、安定稼働に向けて運転条件の確立を進めており、2023年度中に実証運転を開始する予定です。
メタン発酵は、家畜ふん尿や食品廃棄物など、様々な原料からエネルギーを創出できる技術です。エア・ウォーターでは、グループの飲料製造工場から排出される茶粕やコーヒー粕といった食品廃棄物を原料としたメタン発酵技術を開発するとともに、2018年より実証機を稼働させ、安定稼働のための運転条件を確立しました。下水汚泥が混じっていない食品残渣のみをエネルギー原料とし、さらにメタン発酵後の残渣を肥料として活用する実証は国内では珍しい事例です。
上記2つの技術を活かして、未利用バイオマスから得られた電気、熱、CO2を農業と陸上養殖に活用する地域資源循環モデルの実証施設「地球の恵みファーム・松本」を建設中です。
この施設は「バイオマスガス化発電」「メタン発酵発電」「スマート陸上養殖プラント」「スマート農業ハウス」の4施設で構成。地域で発生する未利用バイオマスを有効活用して発電を行うとともに、発電時に発生する熱やCO2を農業や陸上養殖に利用します。さらに、農業、陸上養殖で発生する廃棄物を発電燃料に使用することで、それぞれの排出物を施設内で循環させるとともに、養殖魚、農作物、電気、炭酸ガス、肥料など、様々な形で地域に還元します。
酪農が盛んな地域の未利用資源である家畜ふん尿は、持続可能な国産エネルギーですが、これまでコスト面の課題や扱いに手間がかかることから多くが利用されていませんでした。脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーを活用したい既存天然ガス消費者に向けて、液化バイオメタン(LBM)製造システムを開発しました。
このシステムでは、家畜ふん尿のメタン発酵で発生するバイオガスを収集し、センター工場まで運搬します。低圧ガスの状態で効率よく運搬する技術を開発し、運用の負担を最大限軽減しました。そして、センター工場でバイオガスの主成分であるメタンガスを分離し、液化窒素との熱交換により極低温のLBMに加工後、既存のLNG(液化天然ガス)インフラを用いてLBMをお客様にお届けします。LBMは既存のLNG利用設備で使用でき、LNGと混合して使うこともできるため、お客様のニーズに合わせた提案が可能です。