水素は一般的に半導体、金属、ガラス、化学分野での産業ガスとして活用されており、エア・ウォーターでは水素の製造設備や水素をお客様に届けるための供給設備の開発に取り組んでいます。
水素は燃焼時にCO2を排出しないことから、脱炭素社会の実現に向けて、FCV(燃料電池自動車)や燃料電池のエネルギーとして利用されるほか、最近ではガスタービンや製鉄プロセス等での活用も検討されています。
このように水素への関心が高まる中、エア・ウォーターは今後も、水素利活用の様々なニーズに対応できるよう、新たな設備の開発に取り組んでいきます。

研究開発テーマ

  • 水素発生装置「VHR」

天然ガスを原料とする水素発生装置「VHR」を開発、業界最小レベルのランニングコストを実現しています。

 

  • CO2フリーの高効率水素製造方法「DMR」

製造プロセス上でCO2を排出せず、炭素を固定化しカーボンナノチューブとして回収する新しい水素の製造方法、直接メタンリフォーミング(DMR)法の開発を戸田工業(株)と共同で進めています。

 

具体的な取り組み

①水素発生装置「VHR」

水素ガス発生装置「VHR」
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水素ガス発生装置「VHR」

エア・ウォーターでは2006年に水素発生装置「VH」を開発。本装置は天然ガスの酸化熱を水素への改質反応に活用する機構を有していたことから、水素製造時に酸素が必要であり、ランニングコストが課題となっていました。

 

そこで熱効率の高い独自の改質器を採用し、改質反応に必要な熱を原料ガス由来の廃棄ガスで一部補うことで徹底的にプロセス内の熱回収効率を高めました。2019年に開発した「VHR」は、世界最高水準の発生効率を実現したことで、従来機の「VH」と比較して、天然ガスの消費量を6%削減し、装置の運転にかかる電力削減効果もあわせて10%のCO2排出量削減を達成しました。また、天然ガス、電力の削減効果に加え、酸素添加が不要になったことでランニングコストを約25%削減することが可能となりました。

 

本装置はオプションでCO2回収機構を搭載することも可能です。

今後「VHR」による水素ガスの供給を通じて、低炭素社会の実現に向けた取り組みを進めていきます。

 

※化石燃料から水素を取り出す反応装置

より詳しい情報が知りたい方はこちらから

②CO2フリーの高効率水素製造方法「DMR」

戸田工業(株)と共同で開発を進めている直接メタンリフォーミング(DMR:Direct Methane Reforming)法とは、炭化水素の熱分解反応(反応式 CH4⇒C+2H2)を用いて、水素の製造プロセス上でCO2を排出せず、炭素を固定化しカーボンナノチューブ(CNT)として回収する新しい水素の製造方法です。

 

本反応から得られる水素は、加熱源に再生可能エネルギー等を使用し、且つ生成過程で生ずる固体炭素がCO2として大気中に放出されないため、「ターコイズ水素」と呼ばれています。安価な鉄系触媒を利用したターコイズ水素と、副生成物として高導電性を有する多層カーボンナノチューブの併産可能なシステム構築を目指します。
本技術は日本政府が掲げる2030年での水素製造コスト30円/N㎥の実現や、炭素の固定化による脱炭素の実現に向けた将来有望な技術となり得るため、早期の社会実装に向け、取り組みを推進しています。

システム概略図
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システム概略図

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