体の健康に密接していることで、近年特に注目されている口腔内の健康。なかでも「自分の歯」を長く保つことが、健康寿命を延ばすひとつの鍵となります。エア・ウォーターグループのアエラスバイオ(株)では、ひどい虫歯やケガなどの損傷が原因で歯髄を失ってしまった歯に対しての新たな治療法「歯髄(しずい)再生治療」を2020年に世界で初めて実用化し、全国への普及を進めています。
歯髄とは
歯の中心部にある組織のことで、一般的に「歯の神経」と呼ばれています。歯に水分や栄養を運んだり、虫歯になった時などに痛みを感じる役割を担っています。この歯髄の中には神経や血管および組織を再生させるはたらきを持つ歯髄幹細胞が含まれています。
歯髄再生治療とは
不用歯と呼ばれる噛み合わせに無関係な歯(親知らずや矯正治療で抜く歯)や抜けてしまう乳歯から歯髄幹細胞を採取し、神経を失った歯に移植して再生させる治療方法です。抜髄治療を行った歯に対してこの治療を施すと、歯髄が再生することにより「健康な歯」を取り戻し、自分の歯で美味しく食べることで健康長寿を実現します。
また、2023年6月には同社と連携するRD歯科クリニックにおいて、「歯髄・象牙質(ぞうげしつ)再生治療」を国内で初めて実用化いたしました。
象牙質とは
歯髄を守るように取り巻く硬組織でエナメル質のすぐ下の層にある歯の主成分です。エナメル質よりは硬度が低く、弾力性や柔軟性を持っています。硬いエナメル質の内側を象牙質が支え、クッションのような役割を担うことで破折(歯が割れたり、折れたりすること)を防ぎます。
象牙質再生治療とは
歯髄再生治療と同時に実施する治療であり、採取・培養した歯髄幹細胞に、抜歯した歯の粉砕加工物をあわせて移植することで、「歯髄とあわせて象牙質まで再生する」治療です。粉砕物を用いない歯髄再生治療と比べて、再生された歯髄をより堅固な象牙質で覆うことができる点が特長であり、歯全体の強度向上のほか、間隙の封鎖、再感染防止等の治療メリットが見込まれます。
アエラスバイオ(株)は、将来の歯髄再生治療に備え、不用歯および抜けてしまう乳歯の歯髄幹細胞を保管する「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」ついて、全国の歯科医院との提携を進めるとともに、不用歯からの歯髄幹細胞の採取、培養、保存、輸送を担います。今後も、全国で治療が受けられるような体制を整えるとともに、他人(主として近親者)の歯から採取した幹細胞による治療の研究などを進め、より多くの人々のウェルネス(健やかな暮らし)に貢献してまいります。
このように、歯髄幹細胞は将来の健康への備えとして大きな可能性を秘めています。歯髄幹細胞を用いて病気や怪我で機能を失った臓器や組織を元通りに再生する治療の実用化が期待されており、その実現に向けてアエラスバイオ(株)を中心に研究開発を進めています。