人生100年時代と言われている昨今、老後も活動的に過ごすことを想定している方は多いのではないでしょうか。そのために、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」を延ばすことへの関心が年々高まっています。

 

近年、体の健康に密接に関係していることで特に注目されているのが、歯やお口の健康を表す「オーラルヘルス」。自分の歯を失わずに長く保つことで口腔機能の低下を防ぎ、食事や会話などを差し支えなく行える状態でいることが、健康寿命を延ばすひとつの鍵となっています。

 

そんなお口の健康を実現する新しい歯科医療として誕生したのが「歯髄再生治療」。エア・ウォーターグループのアエラスバイオは、2020年6月より歯髄幹細胞を用いた再生医療を世界で初めて実用化しました。

まずは、歯髄再生治療がどんな治療なのかご説明します。

捨ててしまっている歯の新しい使い道「歯髄再生治療」

生えかわりで乳歯が抜けそうなとき、歯列矯正で歯を抜くことになったとき、親知らずの抜歯を勧められたとき・・・あなたは、その歯をどうしますか?

 

子供の頃は、乳歯は記念に持ち帰ったという方も多いと思いますが、大人になると歯医者さんで抜いた後の歯を持ち帰る方は少なく、ほとんどの歯が捨てられています。


その捨てられる歯の新しい使い道が、「歯髄再生治療」。虫歯などにより歯を失ってしまっても、インプラントなどの人工物ではなく自分自身の歯の神経を再生させることができる治療法です。捨てるはずだった歯を専用のバンクに預けておくことで、いざというときに備えることができるのです。

 

歯の中には神経と呼ばれる「歯髄(しずい)」という組織があり、歯に栄養を運ぶ血管や虫歯になった時などに痛みを感じる役割を担っています。この歯髄の中に含まれる、神経や血管および組織を再生させるはたらきを持つ歯髄幹細胞を使って自分の歯の神経を再生します。

歯髄再生治療とは

歯髄再生治療は、親知らずなどの不用歯(ふようし)から採取した歯髄幹細胞を培養し、治療を必要とする歯に移植する治療のことです。

 

歯髄幹細胞が分泌するさまざまな物質のはたらきにより、歯の周囲組織にある幹細胞が歯の内部に集まり、早ければ1か月ほどで歯髄が再生され、歯の感覚が戻ってきます。6か月~1年ほどで歯髄の周辺組織(象牙質)も再生され、最終的に冠や詰め物を入れて歯の上部を修復し、自分の歯で噛めるようになります。このように虫歯治療により失った神経や血管が再生し健康な歯を取り戻せることから健康寿命の延伸、QOL(生活の質)の向上につながると言われています。

 

歳をとっても元気に生活をするために体力をつけたり、病気に負けない抵抗力をつけたりするには日々の食事が大切なことは言うまでもありません。その食事を支えているのが歯であり口腔内の健康です。歯そのものを失って入れ歯になることを防ぎ、長く自分の歯で食べることで認知症になりにくくなる等、歯髄再生治療への関心と期待は高まっています。

 

歯髄再生治療のプロセス
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歯髄再生治療のプロセス

将来的な歯髄再生治療に向けて、バンクに自分の歯を預けておく

アエラスバイオは歯髄幹細胞のバンクで歯の保管事業を展開しており、歯髄再生治療を実施する再生歯科クリニックと連携し、不用歯からの歯髄幹細胞の採取、培養、保存、輸送を担っています。


歯髄幹細胞のバンクの目的は、培養した幹細胞を深い虫歯や歯髄炎などの原因により抜いてしまった歯髄を再生させる「歯髄再生治療」に用いること。

もう一つは、将来的に歯髄幹細胞を用いて病気や怪我で機能を失った臓器や組織を元通りに再生する治療の実用化が期待されていることです。

 

このように、歯髄幹細胞の保管が将来の健康への備えとして大きな可能性を秘めているのです。

歯髄幹細胞のバンクを利用した方の声

実際に歯髄幹細胞のバンクに細胞を預けた利用者の方に、バンクを利用したきっかけを伺いました。

「もともと、10年ほど前に虫歯を治療した際に神経(歯髄)を抜く治療を行ったので、将来歯周炎になった場合、差し歯やインプラント治療をせざるを得ないのかなと漠然とした不安を感じていました。

 

そんな中、歯髄再生治療とアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクの存在を知り、自分の歯髄を預けておけば、再治療が必要となった際に健康な歯に戻すことができる可能性があることを知りました。

 

義歯に頼らず自分の歯で生活していきたいという思いがあり、歯髄採取から歯髄再生治療までの説明を受け、親知らずから歯髄幹細胞の保管をお願いすることを決めました。

 

何事もないのが一番ですが、何かあった時に歯髄を引き出し、治療すれば健康な歯をとり戻せるという精神的な安心感を得られましたし、より歯の健康に気を遣うようになりました」(河野さん/40代男性)

未来の健康に備える、“不用な歯”の新たな使い道

現在、保管された歯髄幹細胞を自分のためだけではなく、大切な家族にも使うことができるよう研究を進めています。具体的には、二親等以内のご家族の方の歯髄幹細胞を用いて再生治療ができるよう、研究に取り組んでいます。これにより、自分自身の不用歯(乳歯や親知らずなど)がない方にも、ご家族の歯髄幹細胞を用いて歯髄再生治療を受けていただくことができるようになります。

 

また世界では、歯髄幹細胞を用いて脊髄損傷や脳梗塞などを治療する研究も行われています。抜いて捨てるだけだった“不用な歯”が、人々の健康を守るための“重要な歯”になる、そんな未来が確実に近づいてきています。

全国に歯髄再生治療を広げたい

実際に歯髄再生治療を受けるためには、まずはアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクに申し込みのうえ、提携歯科医院での抜歯が必要になります。


抜歯した歯は、歯科医院よりアエラスバイオへ送られ、歯髄幹細胞を取り出して培養した後、治療の時まで凍結保管します。

現在、抜歯提携歯科は全国164施設に達し、歯髄再生治療ができるクリニックは13施設です。(2023年8月時点)

 

今後も、全国で治療が受けられるような体制を整えてまいります。
 

更新日:2022年9月(2023年8月更新)

アエラスバイオ(株)
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「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」へのバンク保管をご希望の方は、アエラスバイオまでお気軽にお問い合わせください。

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとの提携歯科医院

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再生医療ポータル

歯髄再生治療ができるクリニックをお探しの方は、日本再生医療学会が開設したサイト「再生医療ポータル」にてご確認ください。