ニュースリリース

東大病院とエア・ウォーター(株)が「医療環境管理学」の共同研究を開始

2005年04月18日

エア・ウォーター株式会社
東京大学医学部附属病院

東大病院(*1)と産業用ガス分野最大手であるエア・ウォーター株式会社(*2)は、平成18年度に東大病院内に設置される「22世紀医療センター」における共同研究事業について提携しました。
 高齢化社会の到来による抵抗力の低下した患者の増加や、SARSなどの新興再興感染症の出現により、水、空気をはじめとした病院環境を整備する必要性が世界的に高まっています。
 今回の「医療環境管理学」においては、特に、患者の胸腔や腹腔が開放される手術室や、重症患者の集中治療を行うICUなどにおける、1. 「環境に配慮した病院設計学」の構築、2. 欧米の規準に準拠した滅菌基準の作成、3. 感染性廃棄物や医療ガスの処理技術の普及、4. 製剤などの低温保存技術の開発などを目指してまいります。

【背景】
 人口の高齢化や高度先進医療の発達により易感染患者様(*3)に人工臓器移植術、臓器移植手術、心臓血管外科手術などを行う機会が増加しています。さらに、近年、HIV、結核、多剤耐性菌などの新興再興感染症(*4)が出現し、特に易感染患者様においては水、空気、病院環境の汚染が様々な感染症の原因になりえます。このような状況の中で、手術室やICUなどの環境衛生管理および医療機器の確実な滅菌が益々重要になっています。また、この他に低温技術の開発、地球環境保全の観点からの感染性廃棄物、ガス類を適切に処理することも必要になっています。

【共同研究の概要】
 今回の共同研究においては、手術室やICUなどの医療環境を適切に管理するための研究を行ってまいります。研究内容は豊富かつ多岐にわたるものの、全て手術室環境という共通の場において検討が可能なため、手術医学は医療環境管理学の研究に大変役立ちます。
 たとえば、手術室においては患者様の胸腔や腹腔などの体腔が開放されるため、清潔環境の維持管理と清潔操作は重要になります。ICUにおいても重症な患者様に侵襲的な治療を行うため、同様な管理と操作が必要となります。このようなことから、手術室やICUの医療環境を適切に管理するための専門知識を、設計、内装、装置、配管、空調、滅菌、清掃などの観点から総合的に研究するとともに、Virtual Reality技術などの最新技術を応用した手術室設計学を構築することも目指しています。
 環境保護に関しては、患者様の治療に使用する手術器械などを正しく洗浄・消毒・滅菌することも重要です。英国には、国際基準として十分に通用しうるHealth Technical Memorandum 2010 (HTM 2010)という滅菌に関する基準がありますが、日本ではこのレベルに相当する基準は存在しません。そこで、国際基準に準拠するとともに、日本の現状にも則した滅菌に関する基準を作成してまいります。
 また、新興再興感染症が出現するとともに、高齢化により易感染患者様が急増し、その結果、換気設備、給水・給湯設備、手術室や病室の環境表面などの環境因子が原因となる院内感染対策が重要になっています。さらに、病院から排出される感染性廃棄物や様々な医療ガスを適切に処理することも、院内感染防止や職業感染防止だけでなく環境保護の立場から必要です。そこで、これらの課題についても研究してまいります。
 さらに、手術においては輸血製剤や生物由来医療材料が多用されることから、これらの製剤や医療材料を保冷保存するために必要な低温技術(凍結保存、凍結輸送)も研究してまいります。

【今後の展望】
 (1)手術室を設計、運用するときに役立つ、データベースおよび指針を開発します。
 (2)欧米における基準の1つであるHTM 2010に相当する滅菌に関する本邦の基準を作成します。
 (3)空調設備、給水・給湯設備、環境表面などに起因する院内感染を防止する対策を構築します。
 (4)輸血製剤や生物由来医療材料などの管理保管に役立つ低温技術を開発します。
これらの研究成果に基づいて、医療環境管理学を構築します。

【22世紀医療センター】
 22世紀医療センタープロジェクトとは、東大病院をフィールドとして新たな臨床医学または医療関連サービスの研究と開発を行うプロジェクトです。センターにおける研究・開発成果は、早期に東大病院などを通じて患者様に提供することを目標としています。このプロジェクトを推進することで、われわれは高次の医療を社会に還元し、また、わが国の臨床医学の持続的発展ならびに医療関連産業の展開に寄与することができると考えています。
 平成18年度には活動の拠点を新中央診療棟Ⅱ期内に設置される「22世紀医療センター」に移します。
東大病院では、これまでに15社との連携を発表しており、今回のエア・ウォーター株式会社との連携で合計16社の参加が決まりました。

  新中央診療棟II期の概要
   竣工:平成18年3月
   面積:約30,000㎡
   1.診療部分(地下3階~地上7階)
    手術室、放射線診断・治療、生理検査、周産母子、リハビリテーション、病理検査、組織バンク、CPCなど
   2.22世紀医療センター(地上8、9階部分、約6000m2)
     1. 予防医学・健康関連サービス研究/事業
     2. 治験研究/事業
     3. 創薬関連研究
     4. 医療関連教育研究/事業
     5. インキュベーション事業
     6. その他、医療サービスの研究/開発など

   22世紀医療センター 施設イメージ

20050418todai

※中央建物の赤点線部分

【既に連携を発表している講座と企業(発表順)】

健診情報学 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(東京都江東区)
健康医科学創造 株式会社日立製作所(東京都千代田区)
株式会社日立メディコ(東京都千代田区)
免疫細胞治療学 株式会社メディネット(神奈川県横浜市)
臨床分子疫学 田辺製薬株式会社(大阪府大阪市)
ホスピタル・ロジスティクス 佐川急便株式会社(京都府京都市)
腎疾患総合医療センター テルモ株式会社(東京都渋谷区)
統合的分子代謝疾患科学 武田薬品工業株式会社(大阪府大阪市)
先端臨床医学開発 アンジェスMG株式会社(大阪府豊中市)
加圧トレーニング・虚血循環生理学 株式会社サトウスポーツプラザ(東京都府中市)
関節疾患総合研究 中外製薬株式会社(東京都中央区)
医療経営政策学 ニッセイ情報テクノロジー株式会社(東京都大田区)
コンピュータ画像診断学/予防医学 ハイメディック株式会社(東京都渋谷区)
GE横河メディカルシステム株式会社(東京都日野市)
臨床運動器医学 エーザイ株式会社(東京都文京区)

※は取材を受け付けております。

【関連ホームページ】
  日本手術医学会       http://jaom.umin.ne.jp/
  日本医科器械学会     http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsmi/
  日本環境感染学会     http://www.kankyokansen.org/
  日本感染症学会       http://www.kansensho.or.jp/
  日本化学療法学会     http://www.chemotherapy.or.jp/

【注釈】
(*1)東大病院: 東京大学医学部附属病院、病院長 永井良三、所在地 東京都文京区本郷7-3-1
  http://www.h.u-tokyo.ac.jp/
(*2)エア・ウォーター株式会社: 代表取締役会長・CEO 青木 弘
  本社所在地   大阪市中央区東心斎橋1-20-16
  http://www.awi.co.jp/
  産業用、医療用ガスを製造販売会社。産業用ガスの分野最大手。
(*3)易感染患者: 感染に対する抵抗力の減弱した患者様
(*4)新興再興感染症: かつて知られていなく約20年間において新たに発見され、新しく認識された感染症で、
  局地的に、あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症

以上

《本件に関するお問合せ先》
  東京大学医学部附属病院 広報企画部
  電話: 03-5800-9188(直通)
  E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp

  電話: 06-6252-3966

ニュースリリース一覧に戻る