エア・ウォーターでは、工場の排ガスからCO2を回収し、有効利用が可能となる装置「ReCO\( \sf _2 \) STATION」を開発しました。

ReCO\( \sf _2 \) STATIONは、工場内のボイラやごみ焼却場等から排出されるCO2濃度が10%程度と低い排気ガスからCO2を分離回収・精製し、ドライアイスや液化炭酸ガスを製造するコンパクトな装置。従来のCO2回収装置は大規模な製品が多く、導入コストが高価な上に、CO2を分離回収する機能までに留まっており、回収したCO2の利活用が課題でした。ReCO\( \sf _2 \) STATIONは回収したCO2から、ドライアイスや液化炭酸ガスに製造する機能を持ち合わせており、CO2を有効活用することが可能です。本装置には、エア・ウォーターが長年培ってきたガス製造・エンジニアリング技術や炭酸ガス・ドライアイスメーカーとしての知見が結集されています。

炭酸ガスは製油所や石油コンビナートなどから出る、CO2濃度が90%以上の副生ガスを精製して製造されるガスですが、昨今の相次ぐ製油所の閉鎖により、タイトな供給状況が続いています。また、製油所があるエリアは限られているため、炭酸ガスの生産地と必要とする場所が離れている場合は長距離輸送をせざるを得ない現状です。ReCO\( \sf _2 \) STATIONを設置することで、分散型の製造供給網を構築することができ、ドライアイスや液化炭酸ガスの安定供給体制を構築することが可能になりました。

こうした地産地消型のCO2回収・利活用モデルを通じて、脱炭素社会の実現に貢献していく点をご評価いただき、ReCO\( \sf _2 \) STATIONはフジサンケイグループ主催の第31回「地球環境大賞」において「環境大臣賞」を受賞しました。

ここからは、実際にReCO\( \sf _2 \) STATION開発に携わった「CO2回収事業化プロジェクト」のメンバーの1人(西井菜々子)に、開発の経緯や今後のプロジェクト展開について話を聞きました。

プロジェクト発足の背景 「培ってきたガスの分離・回収技術を活用」

地球環境システム開発センター 西井 菜々子
(地球環境大賞 授賞式にて)
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地球環境システム開発センター 西井 菜々子
(地球環境大賞 授賞式にて)

脱炭素化に向けてCO2排出量削減の取り組みが進む中で、産業ガスメーカーとしてエア・ウォーターがこれまで蓄積してきたガスの分離・回収技術を活かしたい、というのが発端です。
私自身、ReCO\( \sf _2 \) STATIONの開発に携わる前は、主にドライアイスパウダーを噴射する精密洗浄装置「QuickSnow(クイックスノー)」をはじめとした炭酸ガスアプリケーション機器の開発を行っていました。この業務経験を活かしてプロジェクトに参画しました。

ReCO\( \sf _2 \) STATIONの特長 「環境負荷の少ない地産地消モデルをコンパクトに導入」

ReCO\( \sf _2 \) STATIONという名称ですが、「ReCO\( \sf _2 \)」はCO2のRecycle、Reuseを表し、CO2の利活用という意味を込めました。(商標登録済)

そして技術的な特長は大きく3つあります。
①CO2排出量の削減
年間最大150トンのCO2を回収し、有効活用できます。温対法のCO2排出算定量の削減も可能です。また、これまで炭酸ガスやドライアイスの長距離輸送時に排出されていたCO2の大幅な削減も可能となります。

②地産地消の炭酸ガス・ドライアイスを製造
低濃度排ガスからCO2を回収し、環境負荷の少ない地産地消型の炭酸ガス製造を実現します。お客様の様々なニーズに合わせ、炭酸ガス(気体)、ドライアイス(個体)や液化炭酸ガス(液体)のいずれの状態でも製造が可能です。

③コンパクトで導入しやすい
設置・搬送しやすい40フィートという小型サイズな上に、高圧ガス製造保安責任者等の有資格者の選任や許認可が不要で、脱炭素関連投資を検討するお客様にとって導入しやすい装置です。

 

開発に込めた想い 「日本各地に設置し、脱炭素化に貢献したい」

社会課題の解決につながる、世の中に求められる装置を作りたいという想いで開発に取り組み、印象にも残るようコンテナ壁面のデザインにもこだわりました。
CO2の濃縮・液化自体は、これまで蓄積してきたノウハウの組み合わせではありましたが、コンテナ型のコンパクトな装置に仕上げるというのは初の試み。設計から実証完了まで約1年半という短い期間で本装置を完成させるのにも苦労しました。
その間、実証環境を提供してくれたグループ会社の日本海水や、装置内の設備製作やエンジニアリングを担当したエア・ウォーター・ベルパール(現エア・ウォーター・メカトロニクス)、エア・ウォーター・テクノソリューションズ(現エア・ウォーター北海道・産業ガス)の現場に何度も足を運びました。エア・ウォーターグループとしてのシナジーを発揮し、密に連携することで、なんとかやり遂げることができました。
今後、日本各地にReCO\( \sf _2 \) STATIONを設置し、炭酸ガス・ドライアイスを地産地消することで脱炭素化に貢献したい。この開発をきっかけに、脱炭素化につながる他の商材の拡販にもつなげていきたいと考えています。

 

聞き手より 脱炭素社会 早期実現のけん引を期待

ReCO\( \sf _2 \) STATIONの開発には、これまで培った技術力とグループ間での連携が不可欠で、エア・ウォーターグループならではの強みを活かした取り組みであることをあらためて実感。社会課題解決の実現のために世の中に必要とされる装置を作りたいという、熱い想いを持って取り組んだ若手女性技術者の活躍にも感銘を受けました。
炭酸ガスやドライアイスは、私たちのくらしや産業に欠かせないものです。現状、タイトな供給状況が続く中、今後さらにCO2の回収・利活用への注目度は高まっていきます。ReCO\( \sf _2 \) STATIONの導入が進むことによって、こうした新市場が創出され、脱炭素社会の早期実現をけん引することが期待されます。
今後も「Meet With AW!」では、社会課題の解決に寄与する、グループシナジーが生んだ製品やサービスをご紹介していきます。

 

【TOPICS】第31回地球環境大賞 環境大臣賞を受賞!

フジサンケイグループが主催する「地球環境大賞」において「ReCO\( \sf _2 \) STATION」が環境大臣賞を受賞しました。2023年4月17日、東京・元赤坂の明治記念館で授賞式が執り行われ、総勢200名近くが参加しました。授賞式後のレセプションは、秋篠宮皇嗣同妃両殿下をお招きして開催され、ReCO\( \sf _2 \) STATIONについて、当社担当よりご説明いたしました。

ReCO\( \sf _2 \) STATIONが「地球環境大賞」環境大臣賞を受賞
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ReCO\( \sf _2 \) STATIONが「地球環境大賞」環境大臣賞を受賞

更新日:2023年5月