国内初!極低温技術を活用して小型LNG充填設備を開発

社会全体で環境負荷低減に向けた動きが加速する中、石油代替エネルギーとして注目されるLNG(液化天然ガス)。トラックやバスなど輸送車両の低炭素対応にも有効とされ、燃料転換の検討が進んでいます。LNGトラックは、現時点でEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)が達成困難とされる1,000km以上の連続長距離走行が可能な上、従来のディーゼルトラックと比較し、10%程度以上のCO2排出削減効果が期待される地球にやさしい次世代燃料トラックです。ヨーロッパや中国では先行して導入が進んでおり、今後日本でも普及が期待されています。

しかしながら、これまで国内においてLNGトラックの導入が進んでいませんでした。その理由の一つが、LNGをトラックに充填するための設備が普及していないこと。そこで、エア・ウォーターはこれまで培った極低温技術を活かすとともに、LNGローリー、サテライトで有する知見を活用し、LNGトラック充填設備の開発に取り組みました。

 

小型ながらも1日最大60台のトラック充填が可能

そして、2020年に、エア・ウォーターは三菱商事株式会社と共同で、国内初となるLNGトラック向け小型可搬式LNG充填設備を開発しました。北海道の石狩市と苫小牧市に一台ずつ設備を設置しています。

本装置は、物流施設内の限られたスペースに設置することも想定した小型設備ながらも、独自の充填プロセスを採用することによりLNGトラックへの充填時間を短縮し、1日当たり50~60台分のトラック充填に対応することができます。また、石狩市に設置している充填設備にはLNGのボイルオフガスを燃料とした自家発電設備を搭載することにより停電時でもトラックへLNGが充填できるだけでなく、万一の有事の際には、外部への電力供給なども可能となっています。

エア・ウォーターと三菱商事は、従来の軽油に比べてCO2排出削減に繋がり、カーボンニュートラル社会の実現を推進させるとして、LNGトラックの国内普及を目的とした実証事業を行うこととし、その取り組みは環境省事業(※1)として採択されました。本実証事業では、本設備をIoT技術でネットワーク化することで、LNGローリーによる本設備へのLNG配送やLNGトラックへ充填の最適化を目的としており、2021年より実証を開始しています。

現在、北海道石狩市と苫小牧市の2拠点で、12社の運送企業にご協力いただき、計14台のLNGトラックが北海道内を走行しています。現在は1日に4~5台のトラックが両ステーションで充填をしています。

苫小牧 小型LNG充填設備
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苫小牧 小型LNG充填設備
北海道内を走るLNGトラック
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北海道内を走るLNGトラック
独自プロセスで充填時間を短縮
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独自プロセスで充填時間を短縮

環境省事業採択について

2022年11月からは燃料のLNGに家畜ふん尿由来の液化バイオメタン(LBM※2)を配合することにより従来の軽油に比べて大幅なCO2排出削減の実現を目指しています。

今後も、三菱商事との実証事業を通してLNGトラックの有効性を検証し、全国展開を目指します。また、カーボンニュートラルに対する需要の高まりに合わせてさまざまなCO2排出削減策も検討して持続可能な社会実現に向けて努力してまいります。


※1:「令和3年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」 同事業は令和4年度より「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に名称を変更

※2:液化バイオメタン(LBM)に関しましてはこちらをご覧ください。
・2023年1月Meet With AW!
未利用バイオガスを活用したLNG代替・CO2フリー燃料「液化バイオメタン」を国内初製造 | Meet with AW! 

・2022年10月 ニュースリリース
日本初、家畜ふん尿由来の「液化バイオメタン」を製造開始~バイオガスを捕集・輸送、センター工場で液化バイオメタンを製造、LNG代替燃料として利用実証~