エア・ウォーターグループの日本海水は国内トップシェアを有する「塩」のリーディングカンパニーとして、業務用塩・家庭用塩を製造・販売しています。「海水産業のパイオニア」を目指して、製塩事業で培ってきた技術を活かし、2010年からは「人工海水」にも事業領域を広げ、個人向け観賞魚飼育や水族館、陸上養殖に利用されています。
水族館や陸上養殖の運営を支える日本海水の「人工海水」は単なる海水の代用品ではなく、数々のメリットを持ちます。
海水の組成を模して人工的に調整された人工海水。日本海水は国内でも有数の製造能力を持ち、水族館の規模に応じて様々な仕様で納入するなどフレキシブルな対応が可能で、北は北海道から南は沖縄まで、全国の様々な水族館に供給しています。また、塩分濃度を調整することができるため、様々な生物に対応ができることが特徴です。天然の海水に比べて不純物を含まず水質が安定し透明度が高いことから、お客様がいつでもきれいな水槽を見ることができるのもメリットの一つといえます。日本海水の人工海水は独自の製法で、抜群の均質性と透明感、溶きやすさを備えています。
これまでの水族館は大量の海水を必要とするため、主に海沿いで建設されてきました。しかし、取水できる環境が限られる上、大雨の後は海水の塩分濃度が変化するなど、自然環境に大きく影響をうけます。海水中のマイクロプラスチックや病原菌といった水質課題もありました。また、海から離れた水族館には、遠方で取水した海水を船やトラックで運び入れる輸送海水も使用されていますが、輸送コストやストックできる量などがネックとなっています。
人工海水は、固形(人工海水の素)の状態で水族館まで輸送し、現地で水に溶かして使用します。場所を選ばず海水をつくることができ、輸送海水に比べ輸送コストが削減できる他、台風などの非常時にもストックして備えることができるため、安定した海水の入手が可能です。
近年は、都市部や海から離れた内陸部での水族館の建設が増えてきており、都市型やビルイン(建物の中に施設を構える)タイプの水族館のオープンが相次いでいます。これからは、水族館の開発が難しかったエリアにも「人工海水」の力でどんどん増えていくかもしれません。
「杜(もり)のサーモンプラント・東神楽」(北海道東神楽町)でサーモンの稚魚を成育中
エア・ウォーターグループは2022年8月、陸上で人工的につくった環境下で魚介類の養殖を行う「陸上養殖」事業に参入。漁獲量の減少や、漁業従事者の減少・高齢化といった課題があり、安定的な漁業モデルが求められている中、北海道東神楽町に「杜(もり)のサーモンプラント・東神楽」を建設し、サーモンの養殖技術・高効率飼育の確立を目指しています。
ここでも「人工海水」が役に立っています。
陸上養殖は、内陸部や山間部など立地を選ばずに建設することができ、水温調節も可能で海と切り離して管理するため自然環境に左右されにくいです。人工海水での養殖は、海洋での養殖と違い、魚の排泄物や餌などで、局所的な海洋汚染を起こすことはありません。海や海洋資源を持続するために掲げられた、SDGSの目標14「海の豊かさを守ろう」の達成に貢献しているともいえます。赤潮などの海洋環境の影響や、病原菌被害のリスクを防げることも、海と隔離した人工海水での陸上養殖のメリットです。
日本海水の人工海水は「シーライフ」シリーズをはじめ、当初は自宅で水槽を設置し海水魚を飼育するアクアリストに向けた販売がメインでした。しかし近年は、水族館や陸上養殖といった業務用のニーズが増えています。家庭用から業務用、研究開発用途まで、様々な形の海水生物の飼育というニーズに応えるため、国内製造という強みを活かし、柔軟な対応で人工海水の販売拡大に取り組んでいきます。
更新日:2023年6月