2022年1月1日。新年の始まりとともに、就労継続支援A型事業所であるエア・ウォーター・スマイルが長野県松本市で事業を開始。この日から、4名の障がい者の方々が働き始めました。
エア・ウォーター・スマイルは、東北、関東、甲信越、中部地域を地盤とする地域事業会社 エア・ウォーター東日本によって設立。産業ガスをはじめとした多様な事業を展開するグループの事業拠点を活かし、地域の課題解決への貢献を目指す新事業の一環です。エア・ウォーター・スマイルでは松本周辺における障がい者の積極的な就労支援を進めるとともに、働き手が不足している高齢者施設から洗濯業務などの受託をスタートしました。
就労継続支援A型事業所とは、「障害者総合支援法」に基づき、一般企業での勤務が難しい65歳未満で障がいや難病のある方が雇用契約を結んだ上で、一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービス。障がい者の方は、被雇用者であると同時に福祉サービスの「利用者」でもあります。
エア・ウォーター・スマイルの開所時に4名だった利用者数は、2022年6月には12名に増え、支援員の数も5名に増えるなど、順調に体制が整っています。また、高齢者施設から洗濯業務や清掃業務を受託するほか、エア・ウォーターグループ内の農園で収穫したトマトの袋詰めや出荷作業などの農福連携の取り組みに至るまで、業務の幅も徐々に広がってきました。
今回、エア・ウォーターグループとして初の就労継続支援A型事業所の立ち上げに携わり、エア・ウォーター・スマイルの管理者 兼 サービス管理責任者として利用者のサポートを行っている織田さんにお話を伺いました。
「エア・ウォーター・スマイルという社名は、ここで働くすべての人々が『笑顔』になれるようにという想いを込めたもの。その日の悩みはその日のうちに解決できるよう、利用者さんとの終業前面談を相談時間として毎日設け、わからないことがあってもすぐ聞けるような雰囲気づくりを心掛けています」(織田さん)
利用者の中には、働くことが久々で漠然とした不安を抱えていたり、分からないことを質問することに苦手意識を持っている方もいます。長く働き続けるためのサポートとして細やかな配慮を欠かさないよう、常に利用者の様子を気に掛けています。
エア・ウォーター・スマイルでの主な業務内容は、松本市内の特別養護老人ホームや、有料老人ホームから受託した洗濯業務。利用者は支援員と一緒に車で各施設に出向き、洗濯物を回収します。事業所に戻った後は業務用洗濯乾燥機を使って洗い、乾燥させた後に施設に返却しています。
そのほか、有料老人ホーム、デイサービスといった施設の清掃業務や、エア・ウォーターグループの農地所有適格法人、エア・ウォーター農園で収穫したトマトのパック詰めや計量・出荷作業を受託しています。
「まずは、多彩な事業を展開するエア・ウォーターグループ内の業務を受託し、エア・ウォーター・スマイルとして請け負う業務の幅を広げていく方針で、今後も新規事業の可能性を探っていきます」(織田さん)
利用者の中には、一般就労を目指す方もいらっしゃいます。そのような方に向けて、エア・ウォーター・スマイルが設けているのが「指導員職員登用制度」。この制度をもとに、利用者から指導員への登用を進めています。その基準は「継続雇用6か月以上」「出勤率9割以上」「ひとつの仕事を指導できるようなレベルに達していること」の3つ。
現在、一名の方が指導員職員登用制度の実習期間中ということで、お話を伺いました。
「今は洗濯業務の責任者を務めています。指導員の見習いとして他の利用者さんに洗濯業務の指示出しや指導を行うほか、業務マニュアルも作成しています。その際、自分の障がいも念頭に置きながら『どんな言葉で書けば、みんなに伝わるのか』『文字だけではなく、どんな工夫をすればみんなが理解できるか』について考え、作業がスムーズに行えるための方法を模索しています。
職場は30代から70代の幅広い年齢層が一緒に働いており、アットホームな雰囲気です。これまでは、周囲に自分の心境を理解されないことも多く悩んできましたが、スマイルでは悩みや不安を相談しながら働けるため毎日が充実しています。支援員の方々に自分を理解してもらいながら支援をしてもらう中で、いくつかの成功体験を通じて自信につなげることができました。この経験から、今度は自分が誰かを支える立場になりたいと、指導員職員登用制度に挑戦しました。
これまでの自分の経験を生かして、利用者の気持ちに寄り添える指導員を目指していきたいですね」(中原さん)
最後に、織田さんに開所からこれまでの振り返りと今後の意気込みを聞きました。
「設立早々、利用者さんの個々のバックグラウンドから、活きた業務効率化の知恵をもらい、助けられることが非常に多いと感じています。
また一方で、利用者さんと会話ができているからといって、伝えたいことが伝わっているとは限らないことも痛感しました。会話の表面上や自分自身の解釈や目線で見るだけではなく、見えない部分での支援が広がればいいなと思います。障がいがあっても、自分の目標を持って、今まで以上に目標に向かって頑張っていける可能性を伝えていきたいです。
そのためにエア・ウォーターグループ内のさまざまな仕事を請け負い、業務の幅を広げられるようにしていきます。すでに、利用者の定員に達しているため、今後は事業所の拡大も視野にいれて、一人でも多くの障がい者の方が継続的に就労できるように頑張っていきます。
法人の理念である『共に成長し、ともに歩む』の通り、利用者さんだけ、支援員だけがひとり歩きするのではなく、一緒に歩んでいきたいです」(織田さん)
掲載日:2022年6月