エア・ウォーターグループで物流事業を手掛けるエア・ウォーター物流は、食品残渣を原料として家畜用飼料を生産・販売する「エコフィード(eco-feed)」事業をスタートしました。エコフィードは食品リサイクルによる資源の有効活用のほか、畜産業界の課題である飼料自給率の向上などにも寄与する取り組みとして、SDGsの観点からも注目を集めています。

農林水産省・環境省によると、日本の食品ロス量は年間522万トン(2020年度)で、日本人1人あたり1年で41㎏という計算になります。食品ロスには事業活動に伴い発生する「事業系食品ロス」と各家庭から発生する「家庭系食品ロス」があり、それぞれ全体の53%、47%を占めています。事業系食品ロスの中で一番多いのは「食品製造業」から発生するもので、全体の23%を占めています。国では2030年までに事業系食品ロスを2000年度比で半減にするという目標を掲げており、各企業の食品ロス削減への取り組みに注目が集まっています。

エア・ウォーター物流が取り組む食品ロス削減

飼料化工ラインと製品梱包の様子
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飼料化工ラインと製品梱包の様子

エア・ウォーター物流では、メインの事業である一般貨物輸送や低温食品物流などの他に、牧場への飼料配送や産業廃棄物の収集・運搬を担ってきました。こうした事業の素地を活かして10年程前から豆腐工場で廃棄されるおからを回収し、飼料として畜産農家に販売するといった取り組みに着手。2017年頃には、グループ内の飲料工場で廃棄される搾汁粕の再利用を開始し、その事業領域を拡げました。
実際に、畜産農家の方々にとってどのような飼料にニーズがあるのかという事を調査するために、担当者は北海道内の畜産農家をヒアリングして回りました。すると、「長期保存できる乾燥した飼料」という結論に至りました。その後は、乾燥機メーカーと協力しながらさまざまな食品残渣を乾燥させ、飼料として試作し、成分評価を繰り返す日々。その中で、かぼちゃに含まれる栄養価が特に高いことが分かり、かぼちゃ残渣の飼料化を決定しました。かぼちゃはグループ内の食品工場での取扱量も多く、残渣の再利用は工場側にとっても食品ロス削減という大きなメリットが得られます。
そして2021年10月、北海道旭川市のグループ施設内に、さまざまな食品残渣の飼料化に対応する加工ライン設備を新設し、本格的に事業化しました。

かぼちゃ飼料は天然由来のサプリメント

普段捨てられる、かぼちゃの種とワタは栄養が多く詰まっており、特にβカロテン、タンパク質、食物繊維などが豊富に含まれています。従来の飼料は化学合成品が多いのですが、かぼちゃ飼料は天然植物由来のサプリメント(飼料添加物)であるため、より安心して利用することができます。舌の肥えた牛たちもよく食べてくれて、これ単体でも、従来飼料に添加して与えることでも利用が可能。乾燥フレークのため保存に適しており、取り扱いも容易です。

 

エア・ウォーター物流では、かぼちゃの種やワタ以外にも、葉物野菜のくずや青果物の搾汁粕など、他の残渣を原料とした飼料開発に取り組んでいます。
今後も、エア・ウォーター物流が得意とする原料調達、自社物流網の活用といったリソースを活かすとともに、畜産農家の方々へのヒアリングや現場での実証調査を通じて、食品ロス削減を含めたさまざまな社会課題の解決に取り組んでいきます。