火災や災害などで一刻を争う命の現場。救助活動を行う消防隊やレスキュー隊が背負っている空気呼吸器もエア・ウォーターグループが手掛けています。その国内シェアは77%を誇り、人々の命を救う一助を担い、皆さまの安全な暮らしに貢献しています。今回は、そんなエア・ウォーターグループの呼吸器の歴史や最新機種についてご紹介します。
 

  

 

原発事故現場で使用
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原発事故現場で使用

人々の健やかな暮らしに貢献するウェルネス分野で、ヘルス&セーフティーグループに属するエア・ウォーター防災㈱は、祖業として呼吸器事業に着手。1927年から酸素呼吸器の国内生産を開始しました。
呼吸器は、煙や有毒ガス、酸欠などの劣悪な悪環境から生命を守るもので、その用途はさまざま。消火活動や人命救助の場だけではなく、設備点検や避難、長時間作業時、また船舶用途、高気圧環境下用途など、幅広く使用されています。
特に、長時間使用可能な酸素呼吸器『オキシゼム』は、福島第一原子力発電所の事故現場で使用された実績があり、呼吸器ブランドとして定着していると言えます。

空気呼吸器は、ボンベの中に高圧で圧縮した空気を充填し、呼吸をする際には減圧して装着者に供給する仕組みになっています。空気呼吸器の開発には、エア・ウォーター防災がこれまで培ってきた産業ガスの制御技術が使用されており、この高圧ガス制御技術を活かし、消火設備や病院向けガス配管設備などに事業の幅を広げています。

100年近くの歴史を持つAW防災の呼吸器事業

当初は酸素を循環させて呼吸する「循環式酸素呼吸器」が主流でしたが、1940年代からは肺力弁(人の呼吸に合わせ、圧縮されたガスを減圧して供給する装置)を備えた「開放式酸素呼吸器」を発売。戦後には構造が簡素化された酸素呼吸器を使用するようになりましたが、1960年代からは支燃性のある酸素ガスよりも安全な空気ガスが主流となったことで、エア・ウォーター防災は国産初の空気呼吸器「ライフゼムJシリーズ」の製造・販売をスタートしました。
その後、安全性、装着性、軽量化などを重視した数々の改良を行い、現在の形状へと進化していったのです。重量はほぼそのままで、携行空気量(装置が持つ空気の量)が2~4倍になり、視界や呼吸の性能、活動性や耐炎性などあらゆる面で格段に向上しました。
 

初代空気呼吸器 ライフゼム J5型
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初代空気呼吸器 ライフゼム J5型
最新型空気呼吸器 ライフゼム A1型
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最新型空気呼吸器 ライフゼム A1型

初代と最新側の比較:重量はほぼそのままで、装置が持つ空気の量は4倍に

名称

初代 ライフゼム J5型

最新型 ライフゼム A1型

重さ

質量10.8㎏

質量11.9㎏

携行空気量

600L

2,430L

大きさ(横×縦×幅)

265㎜ × 480㎜ × 195㎜

280㎜ × 570㎜ × 280㎜

市場をリードするトップメーカーの強み

エア・ウォーター防災が製造する空気呼吸器は年間5,000台超。全国726の消防本部をはじめ、警察、鉄道、原子力、電力、造船、鉄鋼、石油化学、半導体など、危険物を取り扱う業務に携わるユーザーに届けています。その中でも、全国の消防署で使用いただいている空気呼吸器の77%(自社調べ)はエア・ウォーター防災製で、業界をけん引するトップメーカーです。

エア・ウォーター防災の強みは技術・品質、メンテナンスサービス、ブランド力にあります。国産メーカーとして日本人に合った装備を開発し、製造ラインでも、生命を預かる精密な機器として一つ一つ安全性を検証しながら丁寧に仕上げています。空気呼吸器に求められるのは、第一に安全性、そして小型・軽量・信頼性です。より信頼性が高く、使いやすいように開発・改良を続けています。

進化し続ける最先端の空気呼吸器、着用者の昏倒を検知し、さらに安全に!

広い視野や優れた呼吸性を有する最新型「ライフゼムX-1」には、着用者の動きをセンサーで検知する昏倒警報装置「X Alert(クロスアラート)」を装着できます。昏倒状態を検知すると、胸元と背面のLEDが光るとともに警報音が反応し、不意の事故により動けなくなった際に周囲に助けを求めることができます。さらに、ボンベ残圧低下を知らせる機能を備えるほか、オートスタートでスイッチの押し忘れがなく、ボンベを閉じて圧力を抜くまで電源が切れない仕様となっており安全確保を徹底しています。
 

世界初!外部と双方向の情報伝達を実現する「スマートマスク」

2019年から2022年、暗闇や濃煙下などの視界不良時やGPSの届かない屋内での救助活動を支援する「現場活動支援ソリューション」のテーマで、総務省消防庁の研究推進制度の競争的資金を活用し、さいたま市、千葉市の消防局の協力のもと、エア・ウォーター防災と重松製作所、NECが共同でスマートマスクを開発しました。
新たに東京消防庁が主導する積極型研究公募に採用され、2024年度は東京消防庁の協力のもと、消防活動におけるスマートマスクの有用性についての検証試験を実施する計画となっています。

スマートマスクは空気呼吸器の面体に、視界を妨げないようにヘッドマウントディスプレイを採用。赤外線カメラ・可視光カメラを搭載し、赤外線カメラ映像により暗闇や濃煙下での活動や要救助者の検索活動を支援します。また、現場隊長や指揮本部との無線技術によるネットワーク化で、リアルタイムな情報共有が可能になります。面体には専用設計されたフルカラー表示のヘッドマウントディスプレイを内蔵し、外部と双方向の情報伝達を実現する仕組みは世界初です。
今後は、スマートマスクと屋内位置測位システムのデータ間連携を一層強化し、消防活動のさらなる迅速化・効率化に貢献します。
 

視界を妨げないヘッドマウントディスプレイを採用
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視界を妨げないヘッドマウントディスプレイを採用
無線技術により外部との通信が可能に
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無線技術により外部との通信が可能に

エア・ウォーター防災は「人の生命と財産を守る」という企業理念のもと、呼吸器事業を通じて作業従事者から安全対策に関するニーズを聞き出し、現場の課題解決に貢献します。また、高い技術力と豊富な経験をベースに進化を続けることで、安心・安全を社会にお届けします。 


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更新日:2024年4月