エア・ウォーターグループでは、グローバル経済の進展に伴い、多様化する社会からの期待に応え、さまざまな市場や顧客への適応力を将来の成長の糧にしていく考えのもと、ダイバーシティ&インクルージョンや人権尊重の取り組みを推進しています。


こうした中、当社が事業を展開する東南アジアにおいても、多くのイスラム教徒(ムスリム)が住む国や地域が含まれており、今後も宗教や生活スタイルを配慮した取り組みが欠かせません。また、インバウンドで日本を訪れたり、日本に住むイスラム教徒は増加傾向にあります。

 

エア・ウォーターグループでは食品から化学品に至るまで、さまざまな製品を取り扱っていますが、イスラム教徒がこれまで以上に安心してご利用いただくことができるよう、「ハラール認証」の取得を進めてきましたので、その一端をご紹介します。


※ハラールとは、イスラム法において合法なもののことを指します。イスラム教徒の人々にとって、ハラールは生活全般における指標となっており、ハラールではないものを食したり、利用することができません。

◆塩製品でハラール認証を取得

日本海水 赤穂工場
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日本海水 赤穂工場
讃岐工場
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讃岐工場

塩の国内トップメーカーである㈱日本海水では、2015年に赤穂工場と讃岐工場で製造する塩製品をはじめとする全ての商品を対象に、NPO法人日本ハラール協会(NPO Japan Halal Association)よりハラール認証を取得しました。

塩は食品製造に欠かすことのできない基本となる調味料で、味噌・醤油に代表される調味料をはじめ、肉・水産加工品やスナック菓子類などに使われています。日本食・食文化の魅力がますます注目される中、輸出用の食品を取り扱う食品加工メーカー、外食産業などの食品業界のニーズを先取りした対応となりました。

◆食品の日持ち向上に使用される酢酸ナトリウムも

エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱は、食品の日持ち向上や酸化防止などの品質保持に使われる食品機能材である酢酸ナトリウムを製造・販売しています。日本で初めて量産化に成功、独自の粒子制御技術を有する国内トップメーカーで、日持ち向上効果などによる食品ロス抑制を通じて、食の安全・安心に貢献しています。また、酢酸ナトリウムは、人工透析薬の原料としても使用されています。

 

コロナ後を見据えた訪日観光客の増加などにより、日本国内で提供する食品にもハラール対応が求められていく予測や、国内外の販売先よりハラール取得の要望があったことを踏まえ、2020年に湘南工場で製造する酢酸ナトリウム全ての品種においてハラール認証を取得しました。

 

ハラール認証製品の販売量はまだそれほど多くはありませんが、今後、東南アジアを中心としたイスラム圏への販売にも取り組んでいく方針で、グローバルな視点で食の安全に貢献していきます。

◆産業ガスもハラール対応済

枚方工場(大阪府)
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枚方工場(大阪府)

エア・ウォーターの祖業である産業ガス分野においても、2021年より枚方工場(大阪府)で製造する液化酸素・液化窒素・液化アルゴンのハラール認証を取得しています。

 

きっかけは、イスラム圏向けに化粧品原料を製造・輸出している製薬メーカーのお客様からのご要望でした。エア・ウォーターは同社の工場へ液化窒素を供給していましたが、化粧品原料の副資材となる窒素ガスにもハラール認証が求められました。

 

お客様の使用条件にあわせて、最適な状態でガスをお届けすることが、産業ガスメーカーとしての使命です。営業担当者は、さっそく産業ガスの製造部門へ相談し、ハラール認証の取得に取り組みました。

 

エア・ウォーターが製造する酸素や窒素は、これまでも大型の深冷空気分離プラントにおいて、良好な衛生環境のもと、空気を原料に製造していますが、認証機関による工場現場での審査を経て、無事にハラール認証を取得。

 

今後も、医薬品や化粧品などをハラール市場へ展開されるお客様に向けて、当社の産業ガス製品をお役立ていただきたいと考えています。

◆ハラール市場を新たなニーズと捉えて

このように、ハラールを求めるイスラム教徒のニーズは食品だけに留まらず、医薬品や化粧品などの原材料、さらに生産工程やサービス全般に広がっており、生活に関わるあらゆるものに広がっています。


2030年には、世界人口に占めるイスラム教徒は約22億人、4人に1人にまで拡大すると見られており、イスラム教徒をターゲットにした関連市場は注目されています。文化・宗教への理解や配慮を負担と捉えず、新たなマーケットニーズと考えることで、長期的な事業成長につなげていきます。

 

更新日:2024年2月