2023年8月上旬、北海道十勝地方。地平線の広がる広大な畑一面に、収穫時期を迎えた大根が並んでいます。全長5m超の大型収穫機に8人が乗り込み、大きく実った大根を一本一本、そして一気に収穫していきます。一次的な仕分けも収穫機の上で同時に行い、この日一日で約4万本の大根が出荷されました。

 

これは、グループ会社の北海道エア・ウォーター・アグリによる「アグリサポート事業」の一風景です。広大な畑が多い北海道で、種まきや収穫など農業で人手が必要となる作業を中心に、農耕プロセスを代行しています。エア・ウォーターグループは農作物の栽培・調達から加工・販売といった「畑から食卓まで」の一貫体制を構築。安心・安全な食の安定供給を継続するためには、北海道を中心とした800を超える契約生産者の方々に、いかに安定的に農作物を栽培し、供給してもらえるかがカギとなっています。

全長5m超の大型収穫機で大根を収穫
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全長5m超の大型収穫機で大根を収穫
コンベアで運ばれてくる大根を大まかに仕分けてコンテナへ
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コンベアで運ばれてくる大根を大まかに仕分けてコンテナへ

深刻な農業の社会課題と北海道の農業事情

農業人口は急速に減少し、高齢化も課題となっています。農林水産省の統計では、農業を自営している人の数は2015年の175.7万人から、2023年時点では116.4万人と34%減少する見込みで、平均年齢も2022年時点で68.4歳と高齢化が進んでいます。さらに北海道は農家一軒あたりの栽培面積が広いうえ、引退する農家の畑を別の農家が引き継いだりすることで、一軒あたり面積はさらに拡大しており、労働力の確保がますます重要となっています。

こうした中、北海道エア・ウォーター・アグリは、繁忙期を中心に「アグリサポート事業」で営農の継続を支え、農業を続けたいという想いに応えています。

アグリサポート事業で、持続可能な農業や、食料自給率の向上、フードロスの削減などに貢献

北海道エア・ウォーター・アグリでは現在、十勝地方や千歳市周辺、上川地方と呼ばれる名寄市や上富良野町を中心にサポートを展開しており、農機の手配や人手の確保を行い、農作業を代行。その総面積は東京ドーム83個分を超える390haまで広がっています。収穫する作物は多岐にわたりますが、中でも多いのが、にんじん、かぼちゃ、ビート(甜菜)、大根です。特にかぼちゃは、その実のでき方から収穫の大変な作物です。うねの上にまっすぐに実ができるわけではなく、つるに実がなり不規則に並ぶことなどから、収穫機が実用化に至っておらず、現在の技術では手作業で収穫するしかありません。人手が特に必要とされるうえ、その重量からも収穫の大変な作物で、高齢化の進む農家にとって大変なことは言うまでもありません。

休耕地も利用しサツマイモの生産を実施
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休耕地も利用しサツマイモの生産を実施

休耕地の増加も社会的な課題となっており、持続可能な農業を行う上では、まずは農地を休耕地にしないことが大切です。生産量の減少により共同出荷ができなくなり、大根を栽培し続けることが困難となっていた農家があった中、アグリサポート事業によって生産の継続や拡大につながったケースもあります。さらに2023年には、農地の有効活用に向けた新たな作物栽培の一環として、北海道でのサツマイモ生産にも乗り出しています。

このようにアグリサポート事業は、休耕地の増加を防ぐ一助にもなっています。

現在サポートしているのはエア・ウォーターグループ向けに農産物を生産・出荷いただいている契約農家が中心です。契約生産により農業経営を安定化させることもでき、地域農業の持続的発展に貢献しています。

また、青果用として市場出荷などに適さない野菜も受け入れ、グループの加工工場で冷凍野菜やレトルト製品などの原料としたり、流通網を活かし加工食品の原料などとしてグループ外へ供給することで、フードロス削減に寄与しています。

グループの工場でかぼちゃをカットし冷凍野菜へと加工
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グループの工場でかぼちゃをカットし冷凍野菜へと加工
ながいもを冷凍とろろなどへ加工
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ながいもを冷凍とろろなどへ加工

農業を通じた、地域との取り組み

持続的な農業を目指す北海道エア・ウォーター・アグリは、生産者とのつながりを活かし、周辺自治体や地元学校の農業プロジェクトへの参画や農場体験なども行っています。今年は、十勝地方の食材を使い宇宙食の開発に取り組む帯広農業高校の活動に対して、レトルト加工の技術開発と食品工場での試作に協力しました。今後も、地域とのつながりを大切にしながら、農業や食を通じて地域の発展に寄与していきます。

更新日:2023年11月