人材確保等支援助成金のコースや受給要件を説明します

今注目の人材確保等支援助成金とは?コースや受給要件を説明します
目次

従業員を確保するために、労働環境整備に力を入れる企業は少なくありません。介護福祉業界は人手不足という課題があります。厚生労働省が管轄する人材確保等支援助成金は、人材確保や雇用環境の改善に取り組む事業主を助成する制度です。

助成金は8つに分かれており、それぞれ対象や受け取るための条件が異なります。以下では8つのコースと受給要件などについて説明します。

1. 人材確保等支援助成金とは?

事業所の退職率を下げたり、従業員の作業効率を高めたりするなど、働く環境の改善を目的とした制度が人材確保等支援助成金です。厚生労働省の管轄になっています。
以下では助成金の各コースについて解説していきます。

1-1. 人材確保等支援助成金は8つのコースに分かれています

人材確保等支援助成金は一律支給ではなく、2020年現在は目的別に8コースへ分けられています。先に述べたように従業員の定着や働く環境の改善を主な目的としており、コースによって対象となる助成内容が変わります。

例えば次のように考えているなら、その制度の整備を助成するコースがあります。

  • ・従業員を公正に評価できる人事制度を作りたい
  • ・高止まりしている退職率を下げたい
  • ・もっと社員一人ひとりの志気を高めたい
  • ・介護や保育現場で働く従業員の負担を減らしたい

1-2. 2020年度から新たに<人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)>が創設

人材確保等支援助成金はこれまでに7種類ありましたが、2020年には外国人労働者就労環境整備助成コースが新設されました。

創設された背景には、雇用側と外国人労働者のミスマッチがあります。文化と言葉の違いからトラブルが起き、離職するようなケースも目立ちました。

当コースは外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着を目的としています。

1-3. 申請書類の入手方法

助成金を受け取るためには申請が必要です。申請書類は厚生労働省のサイトより入手できます。

申請時に必要な書類ですが、コースを利用するかによって変わります。詳しくは厚生労働省や各都道府県の労働局にお問い合わせください。

申請は各都道府県の労働局かハローワークで受け付けていますが、それぞれ申請条件が異なりますので、申請の際は確認が必要です。

2. 人材確保等支援助成金のコース別解説

人材確保等支援助成金のコース別解説

以下ではそれぞれのコース概要や受給要件などについて詳しく説明します。

2-1. 雇用管理制度助成コース

これまでとは違う雇用管理方法を取り入れ、退職率を下げられた場合に雇用管理制度助成コースの助成金対象になります。ただし5つに分けられており、助成対象になる雇用管理制度がそれぞれ変わります。

対象となる5つの雇用管理制度

それでは、何が対象となるのでしょうか?主なものは、次の5つに当てはまる雇用管理制度です。

  • ・ 評価・処遇に関するもの
  • ・ 研修に関するもの
  • ・ 健康づくりに関するもの
  • ・ メンター制度(先輩が後輩をフォローするなど)
  • ・ 短時間社員制度(※保育事業者のみ利用可能)

いずれかを取り入れて目標をクリアできた場合、助成金が支給されます。助成の対象が細かく定められていますので、計画段階で厚生労働省や労働局に確認をして下さい。

雇用管理制度助成コースの概要

雇用管理制度助成コースは、雇用管理制度の計画をクリアした事業主に支給されるコースです。従業員の雇用管理改善を目的としており、以下の金額が支給されます。

金額
目標達成助成 57万円(生産性要件を満たした場合72万円)
受給要件
  • ・ 雇用管理制度整備のプランを作り、管轄の労働局で認可を受けている
  • ・ 指定の期間内に制度を導入・実施している
  • ・ 提出した計画に基づき、計画期間内に雇用管理制度の導入・実施を行い、かつ、評価時離職率算定期間の末日まで引き続き雇用管理制度を運用すること
  • ・ 別途定める離職率の低下目標値をクリア
生産性要件
  • ・ 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること
  • ・ その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(金融機関から一定の「事業性評価」を得ている)
離職率の低下目標についてはこちら

活用例はこちら

2-2. 介護福祉機器助成コース

介護事業主が介護福祉機器の導入等を通じて、離職率の低下に取り組んだ場合に助成対象となります。

2020年(令和2年)度からの変更事項

令和2年度から、人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)の助成対象となる介護福祉機器の範囲が変更となりました。

追加されたもの
  • ・ 体位変換支援機器(体位変換機能を有するエアマットに加え、体位変換機能を持つベッドを含む)
廃止されたもの
  • ・ 自動車用車いすリフト
  • ・ ストレッチャー
継続となったもの
  • ・ 特殊浴槽
  • ・ 装着型移乗介助機器
  • ・ 移動・昇降用リフト

体位変換支援機器が追加された一方、自動車用車いすリフトとストレッチャーが対象から外されています。

特殊浴槽の一つとして、シャワー浴槽があります。介護のために様々な機能がついていることが特徴で、介護者の負担が大幅に軽減されます。なお、人材確保等支援助成金の利用にあたっては導入する機器が助成対象となるか、管轄する各都道府県の労働局またはハローワークに確認をしてください。

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介護福祉機器助成コースの概要

介護福祉機器助成コースは、労働者の身体的負担を軽減するため新たな介護福祉機器の導入等を通じて従業員の離職率の低下に取り組む介護事業主を対象としております。

なお、助成金の対象や支給額は以下の通りです。

助成対象
  • ・ 介護福祉機器の導入費用
  • ・ 機器の使用徹底に必要な研修費用
  • ・ 保守契約費用
人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)内の受給額や活用例などの詳しいはこちら

2-3. 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース

賃金に関する制度の整備を行った時に助成金が支給されるのが介護・保育労働者雇用管理制度助成コースです。

介護・保育労働者雇用管理制度助成コースの概要

介護事業主または保育事業主が労働者の職場への定着の促進に資する賃金制度の整備を通じて、介護労働者や保育労働者の離職率の低下に取り組んだ場合に支給されるのが介護・保育労働者雇用管理制度助成コースです。

助成金種別 金額
制度整備助成 50万円
目標達成助成(第1回) 57万円(生産性要件を満たすと72万円)
目標達成助成(第2回) 85万5千円(※生産性要件を満たすと同108万円)
受給要件はこちら

活用例はこちら

2-4. 中小企業団体助成コース

中小企業者を構成員とする事業協同組合等が、傘下の事業者の人材確保や従業員の職場定着を支援するために一定の事業(中小企業労働環境向上事業)を行った場合、それに要した費用の3分の2の額を助成します。

支給対象となる事業協同組合等の要件

次に当てはまる事業協同組合等※1が支給対象になります。

  • ① 改善計画※2を作成し、都道府県知事の認定を受けた事業協同組合等であること(以下「認定組合等」といいます)。
  • ② 認定組合等の構成員である中小企業者※3のために中小企業労働環境向上事業を行うこと。

※1 ①事業協同組合、②事業協同小組合、③協同組合連合会、④その他特別の法律により設立された組合およびその連合会のうち政令で定めるもの、⑤中小企業者を直接または間接の構成員とする一般社団法人。 ※2 中小労確法に基づき、事業協同組合等や中小企業者が雇用管理の改善に取り組むために策定する計画。 ※3 中小労確法及び政令に定める中小企業等

中小企業団体助成コースの概要

  • ① 1年間の中小企業労働環境向上事業の実施に要した経費の2/3の額が支給されます。
  • ② ただし、支給限度額が構成中小企業者の数により下表のとおり定められております。
認定対象の組合区分 金額の上限
大規模認定組合(組合を構成する中小企業が500社以上) 1,000万円
中規模認定組合(同100〜499社 800万円
小規模認定組合(〜99社) 600万円
受給要件はこちら

2-5. 人事評価改善等助成コース

生産性向上に資する人事評価制度の整備に適しているのが人事評価改善等助成コースです。

人事評価改善等助成コースの概要

生産性向上に資する人事評価制度を整備し、定期昇給等のみによらない賃金制度を設けることを通じて、生産性の向上、賃金アップ及び離職率の低下を図る事業主に対して助成するものであり、人材不足を解消することを目的としています。

制度設備助成と目標達成助成の2つがあります。

助成金種別 金額
制度整備助成 50万円
目標達成助成 80万円
受給要件(制度設備助成・目標達成助成)や生産性要件の詳しい内容はこちら

2-6. 設備改善等支援コース

設備投資を検討中なら、設備改善等支援コースが適してます。

1年タイプと3年タイプに分かれる

設備改善等支援コースは設備導入費用によって1年タイプと3年タイプがあり、以下のように区分されています。

区分 1年タイプ 3年タイプ
設備導入費用 1,000万円未満 240〜5,000万円未満
5,000〜1億円未満
1億円以上

設備改善等支援コースの概要

設備改善等支援コースは生産性向上に資する設備等を導入することにより、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上を実現した企業に対して助成するものです。助成金は、下表の額が支給されます。

タイプ 助成金種別と金額
1年 計画達成助成:50万円
上乗せ助成:80万円
3年 計画達成助成(1回目):50〜100万円
同2回目:50〜150万円
目標達成助成:80〜200万円
受給要件と生産性要件はこちら

2-7. 働き方改革支援コース

新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図ることを検討している場合、働き方改革支援コースが適しております。

働き方改革支援コースの概要

働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に支給します。助成金は2種類あり、支給額と受給要件は以下のように定められています。

受給要件(計画達成助成)や目標達成助成についてはこちら

2-8. 外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者就労環境整備助成コースは2020年度に新設されました。外国人労働者の定着を目的としております。

外国人労働者就労環境整備助成コースの概要

外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識の不足や、言語の違いなどから労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を支給するものです。

支給金額と受給要件は以下のように定められています。

金額
生産性要件を満たしていない 対象経費の2分の1(上限57万円)
満たしている 対象経費の3分の2(上限72万円)
対象経費
  • ・ 通訳費(外部委託)
  • ・ 翻訳機器の購入費
  • ・ 翻訳費(外部委託)
  • ・ 弁護士などへの委託料
  • ・ 社内標識類の設置・改修費
受給要件
  • ① 外国人労働者を雇用する事業主であること
  • ② 外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施すること
    • 1 雇用労務責任者の選任
    • 2 就業規則等の社内規程の多言語化
    • 3 苦情・相談体制の整備
    • 4 一時帰国のための休暇制度
    • 5 社内マニュアル・標識類等の多言語化
  • ③ 就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
生産性要件
  • ・ 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること
  • ・ その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(金融機関から一定の「事業性評価」を得ている)

3. まとめ

この記事では人材確保等支援助成金について紹介しました。さまざまな面で施設運営をサポートする助成金となりますので、働く環境の改善を考えている事業主の方はご参考ください。なお、助成金利用の際は、必ず厚生労働省のホームページより、最新の情報と申請方法等の確認をお願いします。

厚生労働省HP