地域と生み出したプロジェクト 東日本

活きつづける山形へ、響き合え。

 

 

山形酸素×エア・ウォーター

東北の地で、ミッション・ビジョンの体現を。

2020年6月1日。東北エア・ウォーター株式会社と山形酸素株式会社の合弁会社、山形液酸株式会社が誕生し、東北地域の日本海側に初めてのVSUが建設され、供給がスタートしました。東北エア・ウォーター・河合社長、山形酸素・本間社長の両者は「このプロジェクトは、まさに地域事業のミッション・ビジョン・バリューの体現である」と言います。プロジェクト推進に大きく携わったエア・ウォーター東日本 産業部 高橋弘行を交え、プロジェクトのプロセスと未来について語りました。

STORY1

常に新たな可能性を模索するチャレンジ精神

山形酸素㈱ 代表取締役社長 本間 隆生
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山形酸素㈱ 代表取締役社長 本間 隆生

本間:
エア・ウォーターさんとのお付き合いは1980年頃までさかのぼります。当時はまだ大同酸素さんとして、仙台市内に1拠点。たった4人の営業所でしたよね。

 

河合:
そうですね。当時、我々は東北での影響力も小さく、限られたお客様しかいませんでした。山形県においては、1つか2つくらいのお客様しかいなかったと思います。

 

本間:
当時、我々は大同酸素さんの医療用滅菌ガス「ダイサイド」を使わせていただいており、山形県内の病院向けに一緒に展開を進めておりました。その時に、すごく衝撃を受けたのを覚えています。当時から、とにかくレスポンスが早かった。通常、我々のビジネスはその場ですぐに返事ができず、持ち帰って返事をするのが通常でした。しかし、エア・ウォーターさんはほとんどの場合、その場で即決。担当者が自分の責任において決める、という気概がすごかった。とても刺激を受けましたし、学ぶべきことが多かったですね。

 

河合:
ありがとうございます。我々はそもそも業界では後発ですし、当初、東北では上位2社が圧倒的な存在感を持っている状態でした。「いつかこの2社を抜いて一番になりたい」。みんなそれを思って頑張っていました。

STORY2

すみずみまで安定供給するネットワーク

2020年6月、山形県寒河江市にVSUが稼働した
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2020年6月、山形県寒河江市にVSUが稼働した

本間:
VSUを意識しはじめたのは2004年。当時の東北支社長だった田村さんに「新潟液酸の竣工式にお越しになりませんか?」と誘っていただいてからです。実際に、VSUを初めて目の当たりにして「こういった小型のものでも、安定的にガスを作れるのか」と感心しました。

 


高橋:
そして、その数年後に東日本大震災が起こりましたよね。

 

本間:
そうです。この時は、VSUの必要性を痛切に感じました。山形の場合、多くは東側の沿岸部からガスが供給されていたのですが、そこが全滅でしたので大変苦労しました。

 

河合:
エア・ウォーターグループとしても、当時、拠点がなかったのは山形だけでした。山形のみなさまに安定的にガスを供給するためには、山形酸素さんと組むのは必然だったと思います。

 

高橋:
山形酸素さんは、山形県をくまなくカバーしていらっしゃいますし、地域に根ざして様々なエネルギーを扱っていますから。

 

本間:
我々はやはりお客様の窓口、すなわちディーラーとしての役割があるので、それに徹する。ただ、我々だけではできないこともあります。そこで、エア・ウォーターさんと一緒に組むことでメーカー機能を持ち、お客様のニーズに応えていくことが大事だと思いました。そして2018年、正式にエア・ウォーターさんと協業することを決めました。「いかに供給ネットワークを持つか」という震災以降の命題に対して、応えていける体制ができました。

STORY3

地域の声に耳を傾ける傾聴力

エア・ウォーター東日本㈱ 東北支社長 河合 昌人
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エア・ウォーター東日本㈱ 東北支社長 河合 昌人

河合:
現在、東北では福島・岩手・山形の3つのVSUが稼働しています。当初は各方面から「供給過多なのでは」と言われましたが、稼働率は3基で100%に達し、成功と言えます。

 

高橋:
つまり「それだけ遠隔地から運んでいた」ということの証ですね。

 

本間:
昔は「どこから持ってくるんですか?」とお客様に聞かれることはほぼありませんでしたが、最近ではよく聞かるようになりました。お客様にとっては、供給源が身近にあるという安心感がありますし、我々も自信を持って提案できます。稼働率100%ということは、結果として「産業ガスの地産地消」というニーズがあったということです。

 

河合:
自治体にとっても魅力になると思います。山形県にはこれから造成する工業団地がありますので、企業が拠点を構える条件として、水・電気・労働力はもちろんですが、「ガスの供給源も県内にありますよ」と言えるのは非常に大きい。誘致にも影響するはずです。半導体や電子部品の製造においても、液体窒素のバックアップ供給が可能になります。新たな企業参入や山形地域全体の活性化につながる可能性があります。

STORY4

あきらめずにやり続ける実現力

エア・ウォーター東日本㈱ 東北支社 
産業部部長 高橋 弘行
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エア・ウォーター東日本㈱ 東北支社
産業部部長 高橋 弘行

本間:
エア・ウォーターさんのすごいところは、東北の責任者が20年以上変わっていないところですね。普通の会社だったら、そんなことはない。会社が社員に対して「信じて任せる」。そして、社員は見事に期待に応え、実を結ばせた。これは大変な努力だと思います。

 

河合:
あきらめずにできたのは「自分たちのサービスがお客様や地域のためになる」という気持ちがブレなかったからです。特に、東北はプロパー社員が多いので「自分のルーツがある東北で、いつかはナンバー1になろう」とみんなでバトンをつないできました。

 

高橋:
地元出身のプロパー社員としては、地域の人が働きやすい環境をつくることで、雇用の拡大をしたいという思いがありました。旧態依然の古い充填所を新しくすることで、効率を良くすることはもちろん、「ここで働いて良かったな」と思ってもらうことが一番の喜びだと思ってやってきました。山形だけでなく、東北は人口減少がさけばれていますが、エア・ウォーターと山形酸素の力で雇用の場をつくり、一人でも二人でもいいので、人口減少に歯止めをかけたい。この地で若い人が働く場を提供したいです。

STORY5

多角事業が織りなす技術や知見の融合

医療用ガスの供給のほか、多様な事業を手掛ける
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医療用ガスの供給のほか、多様な事業を手掛ける

本間:
今後は、ガス関係だけでなく様々なことでエア・ウォーターさんと協業したいと考えています。エア・ウォーターさんは、産業ガス、エネルギー、化学、農業・食品、物流など多様な事業を地域に合わせて幅広く展開されています。今後、小口のお客様も、エネルギーを油からガス化にする流れは避けて通れません。「安全性の高いLNGを持って来れないか」という声もたくさんいただきます。また、山形県は農業県ですので、農業の分野で一緒にやれることがあれば面白いですね。

 

河合:
農業分野といえば、すでに長野県で取り組んでいる、熱源から発生する炭酸ガスをトマトの生育に使用するトリジェネレーション事業を山形県でもやっていきたいと考えています。また、山形酸素さんは病院関係もしっかりと手掛けられているので、エア・ウォーターの医療機器もぜひ扱っていただき、地域への貢献度をさらに増していきたいです。

 

高橋:
実際に医療機器分野での協業はスタートしています。ぜひ、さらなる新規事業をやりたいですよね。

 

河合:
山形酸素さんもエア・ウォーターも、お互いに交わることがなければ決して知り得なかった情報や技術がまだまだあります。地域のお困りごとに対して、トリジェネレーションや医療分野以外にも、養殖事業やマイクロサテライトなど、あらゆる技術やサービスをお届けすることで地域に貢献できるはずです。

 

本間:
そうですね。例えば、山形の名産であるさくらんぼを育てるのは、すごく人手がかかるんですね。現実問題として、人口が減少する中で後継者不足が起こり、放棄されている農地が増えています。そんな状況でも、食の確保というのは避けて通れません。エア・ウォーターさんが持っている養殖や栽培などの食の技術を駆使して、山形という地域が日本の食の確保に役立つことができればいいと思っています。

 

河合:
このVSUの建設が、地域の方々にとって「希望の塔」のような存在になれば嬉しいですね。そういえば、この山形液酸のVSUは工業団地の入り口にそびえ立っていますよね。工業団地に向かって車を走らせていると、この白い塔が遠くからどんどん近づき、来る人を出迎えてくれる。この寒河江工業団地のシンボルになれば嬉しいですし、またどこかの地でVSUの建設が始まった時に「この地域もきっと元気になるぞ」と、地元の方に希望を抱いてもらえるようになれば嬉しいです。

EXTRA STORY

地域と響き合うビジネスを創りだし、山形を「暮らし続けたい地域」に。

本間:
2019年に山形酸素の経営理念をリニューアルしました。「私たちはお客様と手をつなぎ心をつなぎ、エネルギーの安定・安全供給を通して共に成長発展し地域社会に貢献します」という言葉です。この考えは、エア・ウォーターさんの地域事業のミッション・ビジョンにぴったりと当てはまります。

 

河合:
そういった意味でも「魂」のレベルで、両社は吸い寄せられたのかもしれませんね(笑)。エア・ウォーターが最も大切にしているのは「共存共栄」という考えです。対等で自由な関係を重視しています。


本間:
それは我々にとっても大変取り組みやすいです。経営理念をリニューアルしたのは、使命や存在意義を全員がしっかりと認識して「ここに一緒に向かっていくんだ」ということが大事だと感じたからです。社員に対しては「この考えを常に自問自答し、合致しているならば堂々とやりなさい」と伝えています。

 

河合:
それは素晴らしいですね。これからも、両社の強みを響き合わせ、山形という地域を暮らし続けたい地域にするというビジョンを実現したいですね。

[PROFILE]

本間 隆生(ほんま たかお) 山形酸素 代表取締役社長
山形大学工学部卒業後、大同毛織を経て1983年に山形酸素(株)に入社。常務取締役、専務取締役、相談役を経て、2018年11月より代表取締役に就任。


河合 昌人(かわい まさと) エア・ウォーター東日本 常務執行役員 東北支社長
1990年 大同酸素(株)入社。エア・ウォーター・ゾル、新潟エア・ウォーター、近畿エア・ウォーター等への出向を経て、2018年4月より執行役員、東北エア・ウォーター(株)代表取締役社長へ。現在、エア・ウォーター東日本(株)常務執行役員 東北支社長。

 

高橋 弘行(たかはし ひろゆき) エア・ウォーター東日本 東北支社 産業部部長
2001年 東北エア・ウォーター(株)入社。仙台営業所、福島営業所、南東北支店長、産業部を経て、2014年6月より取締役 産業部部長へ。2020年10月よりエア・ウォーター東日本(株)東北支社 産業部部長。